カテゴリ:NHK朝ドラ
NHK「虎に翼」を見終わりました。
最終週がいちばん重くて難しかった! 脚本の吉田恵里香が、 「もうワンクール書きたかった」と言ってるので、 半年じゃ収まりきらない内容を扱おうとした、 …と解釈する視聴者もいるようですが、 わたしはむしろ、 あえて答えの出ない問題を、 最後の最後にありったけにぶち込んだのだな、 …と感じました。 実際、法にたずさわる人たちなら、 たえず答えの出ない問題に直面するだろうし、 のみならず、 民主主義である以上は、 社会全体が「法のあるべき姿」について、 終わりもなく考えつづけねばならないですし。 ◇ たとえば、寅子は、 美雪に対しては「人を殺してはいけない理由」を語り、 美位子に対しては「人を殺しても許される理由」を語りました。 そういう矛盾をあえてぶつけるように描いて、 なおかつ、その答えはかなずしも整合的じゃない。 十分に整合的な答えが出てないので、 それを作品の欠点と断じる視聴者もいるでしょうが、 わたしはむしろ、 こういう問題に対して、 安易に答えを出すことのほうが間違いだと思うし、 整合的な答えを出さない姿勢のほうが、 かえって脚本家としては倫理的かもしれない。 ◇ たとえば、少年犯罪に対して、 与えられるべきは「愛」なのか「罰」なのか? これもまた、 とても難しい問題であって、 寅子は十分に整合的な答えを出してません。 実際のところ、 「罰」を与えるのは簡単だけど、 「愛」を与えるのはとても難しいと思える。 お金もかかるし、時間もかかるし、 人材も、制度や設備も必要だろうし、 能力も、技術も、経験も必要だろうと思う。 ただ、 すくなくとも史実としては、 三淵嘉子が「愛の裁判所」の理念を絶対に捨てなかった …ということですよね。 ドラマはその史実に沿ったにすぎません。 ◇ このドラマは、 けっして「敗北」には終わってませんが、 かといって「勝利」に終わってるわけでもなく、 強いていえば「問いかけ」に終わった感じです。 … 優未についても、 けっして「出来のいい娘」には描かれてない。 大学院に進めるくらいの能力がありながら、 それを活かすことなく、 結婚もせずに、モラトリアム的に生きてる。 でも、それは逆に言えば、 《出来の良い子に仕立てるのが子育ての成功》 とみなす世間の価値観に対する、 このドラマなりの反論だったともいえます。 《正しい子育て》とは何なのか? これもやはり答えの出ない問いのはずです。 なお、このドラマでは、 はじめて注目された俳優が沢山いました。 わたし的には、 優未役の川床明日香がいい女優さんだな、 …と思いました。 なんとなくNHKのドラマに向いてる気がする。 … 米津玄師のテーマ曲で締めた最終回にも、 じゅうぶん満足できたのですが、 もし脚本家にスピンオフを書く気があるなら、 それもぜひ見てみたいです。
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最終更新日
2024.10.04 13:52:34
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