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黒島結菜版「時をかける少女」の最終回。
日芸の写真科だった黒島結菜のカメラが、 ただのネタではなく、物語の重要な要素になってました。 季節が消えて「冬」だけになった未来のために、 ヒロインは「夏」の記憶を写真に残していたのですね。 ◇ タイムパラドックスとか、パラレルワールドとか、 そういう面倒くさい話はありませんでしたが、 「時空の自浄作用が働いて異物を排除しようとする」 「未来人の細胞は時間の流れが早くなって短命になる」 みたいな設定でした。 また、未来では、 配偶者だけでなく、職業についても、 「適性に合わせて効率的に決められる」とのこと。 AIのマッチング技術が発展してるっぽい。 ◇ もともと七夕の物語だったので、 未羽と翔平を「織姫と彦星」に見立てたわけよね。 しかし、残念ながら、 未羽が翔平に恋したようには見えませんでした。 翔平のほうも、 催眠技術で未羽の記憶を書き換えてるわけなので、 菊池風磨の一癖あるキャラとも相まって、 いまひとつ誠実な恋愛とは思えない面があり、 (吾朗ちゃんのほうがはるかに誠実に見えます) 結果として、 2人の別れのシーンにも、あまり心を動かされなかった…(^^; ◇ 1983年の原田知世版の場合、 芳山和子は深町くんに恋しますが、 深町くんのほうには何の感情もありません。 監督の大林宣彦は、 深町くん役の高柳良一に、 あえて「棒読みの演技」をさせたらしいけど、 未来人の深町くんって、無機質・無感動なのです。 たんに、 吾朗ちゃんについての記憶を置き換えた結果、 その副作用として、 芳山和子のなかに深町くんへの恋心が生じてしまった、 …みたいな話なので、 深町くんは、 芳山和子の記憶を消したら、 無慈悲にもあっさり未来へ帰ってしまう。 … ある意味、 原田知世版の芳山和子は、 身勝手な未来人に翻弄された被害者なのよね。 ただ、観客にしてみれば、 芳山和子の宙に浮いてしまう恋心が切ないし、 想い人の感情を横取りされた吾朗ちゃんも切ない。 ◇ 原田知世版において、 深町くんはあくまで「虚」の存在でしかありません。 ヒロイン自身はそのことに気づいてないけど、 観客から見ると、ヒロインの深町くんへの感情は、 じつは吾郎ちゃんへの感情なんじゃないの?と思える。 それは「さびしんぼう」も同じです。 主人公のさびしんぼうへの感情は、 じつは母親への感情なんじゃないの?と思える。 そこに大林宣彦の物語の肝がある。 https://www.jtnews.jp/cgi-bin/review.cgi?SELECT=24063&TITLE_NO=2906#HIT ◇ 黒島結菜版では、 そういうやりきれない切なさはないけれど、 そのぶんエモーショナルな要素にも乏しい。 むしろ、 「恋愛感情」が宙に浮く悲しさよりも、 「青春の記憶」が消えてしまう悲しさ、 …という面が強調されてる感じです。 以下は、最終回冒頭の未羽のセリフ。 別れが苦手。嫌い。 かけがえのない青春の時間こそが大事ってことよね。 翔平の側から見ても、 「夏」と「恋」を失ってしまった未来人が、 現代にタイムスリップして、 はじめて「夏」と「恋」を経験する物語になってる。 翔平を「虚」でなく「実」の存在にしたのは、 そのためなのだと思います。 ◇ なお、 原田知世版では、 ヒロインが深町くんの記憶を失いますが、 黒島結菜版では、 未羽が翔平の記憶を失くしたかどうか、 はっきり描かれてません。 なので、 未羽が「夏」の写真を撮ってるのは、 未来のためと意識してのことなのか、 いまいち分からないし、 翔平への恋心が残ってるかどうかも不明なので、 その後の吾朗ちゃんとの関係がどうなるのかも、 視聴者のご想像にお任せします…って感じ。 ◇ …余談ですが、 三浦透子と古畑星夏は文字どおりのチョイ役で、 さほど物語に絡んできませんでした。 今から考えると、ちょっともったいない。 吉本実憂と八木莉可子にも、 期待したほどの役割は与えられてませんでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.10.04 13:48:43
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