アナログといえばグレース
日本のオーディオを語る上でグレースは、歴史的にも重要なポジションです。グレースは朝倉昭氏が率いる品川無線の老舗ブランドです。朝倉昭氏がフォノピックアップを作るきっかけになったのは「高校生の時に進駐軍からフォノカートリッジの修理をアルバイトで引き受けて出来栄えを誉められた」のが出会いだったというマニアには有名なエピソードがあります。グレースというブランド名の由来は、アメリカのグレーというブランドのレプリカ製作から製品がスタートしたからだそうです。事実上最晩年の製品となったMM形カートリッジのLEVEL2および、F-14シリーズにはダイヤ、ルビー、サファイヤなど宝石を素材にした感知レバーやボロン感知レバー、並木宝石のマイクロチッジ採用など興味深い技術タームを見事に製品化していました。品川無線は第一京浜沿いにある庭付きの少し大きな屋敷というか掘建て小屋みたいな小さな社屋(今の社屋は貸し店舗付のビル)の零細企業ですが、生粋の技術タームでCDとは違った楽しみを提供してくれる逸品を作るっていました。1970年代ぐらいからは店頭にある流通在庫をへらしてダイレクトメール中心に自社販売へ集中させたこともあってかグレースの存在と知らない方々も多いかもしれません。(店頭販売は唯一秋葉原の木村無線で行っているようです。)近年では、ボロンのような特殊な材料やダンパのゴムなど入手するのが難しく思うように製品製作ができないようで、アメリカから契約切れ品を回収して製品のラインナップしていたりするようです。