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2010年03月03日
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カテゴリ:読書
 私は通常本は、小説やドキュメントは読むけれどエッセイは滅多に読まない。が、女性歴史小説家の塩野七生さんのエッセイは例外で好んで読む。彼女の文章のスタイルが好きなのと、風刺が効いていたりして楽しいのだ。
 塩野氏の『男の肖像』は、アレクサンダー大王、ユリウス・カエサル、北条時宗、織田信長、千利休、西郷隆盛、ナポレオン、毛沢東などなど、日本は勿論世界の歴史的人物を世間一般に語られている人物像も紹介しながら、彼女の女性としての目線で評価され、紹介されているところが、大変痛快である。
 例えば、ナポレオン。
 
 『軍隊の近代化は衆目一致の業績だが、一見些細なことと思えるものから大きな効果を引き出す能力にいたっては抜群で、しばしばこれが戦勝につながった。
  また、兵士たちを言葉によって鼓舞する技にかけては、文字どおりの天才だった。長演説をぶつわけではない。こんこんとさとすわけでもない。それなのに、兵士への訴え方を知っていたのだ。ナポレオンの言葉があるや、一平卒にいたるまでふるい立つのだった。


 ・・・とナポレオンが『たぐいまれなる才能に恵まれた武将』であったことは塩野氏は認めている。

 が、ナポレオンがブォナポルテ家の弟や妹の就職先や結婚相手を見つけるという任務を実行したことを紹介しながらも、

 『私にはなぜか、ナポレオンという男に対して興味がもてないのだが、それは、彼の家族博愛主義にあると思う。家族親族に囲まれた男は、闘う家長ではあるかもしれないが、男の匂いを失うことを宿命づけられる。家族の写真を見せてはその話に熱中する男に似て、そこには、責任感あふれる申し分ない家長はいても、女の血を騒がせる、セクシーな男はいないからである。』 

 ・・・と世界のヒーロー、武将ナポレオンに至っても塩野氏の手に掛かっては、最後には一刀両断に切られてしまうという、小気味良さを感じるエッセイなのである。





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最終更新日  2010年03月03日 18時03分37秒
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