見たまま、感じたまま、思ったまま

今夜はちょっと趣を変えて、ジェネリックを使う患者さんが増えると薬局にどういう影響があるかと言うことを書いてみよう。
この場合の薬局というのは調剤薬局の事だと考えていただければ良い。

例を挙げながら考えてみよう。
ここにメバロチンと言う薬がある。これは第一三共が発売しているコレステロールを下げる薬である。この数年の大きな目玉としてこのメバロチンのジェネリックの登場があった。
「今日の治療薬」と言う本を広げてみると、このメバロチンのジェネリックはかなり多くのメーカーから発売されている。ジェネリックの大手と言えば、沢井、大洋、東和あたりだろうけれど、それ以外の弱小（失礼）メーカーからも合計１０社ぐらいから発売されている。

さて、このメバロチンのジェネリックを希望した患者さんが居るとする。
僕が出した処方箋にはメバロチンが記載されているが、但し書きのところに「ジェネリックへの変更可」と言う箇所があり、そこにチェックを入れると薬剤師さんがジェネリックに変更できる。
だから、本来は薬局には1種類のメバロチンのジェネリックを置いておけば良いのであるが、ぎっちょんそうはいかないのである。
どこのメーカーでも良いと言う人も居るけれど、特に以前より処方されており当院での継続処方を希望するような場合は、どうしても同じメーカーの薬をと言う患者さんが多い。
薬局に置いてあるのはＢと言うジェネリックなのに、その患者さんはＣと言うジェネリックを希望してＢへの変更に応じないと言う事は多々ある事である。

このようにして、薬局はメバロチン、そしてメバロチンのジェネリックを何種類か在庫させておく必要が生じてくる。かくして薬局の在庫薬剤は増えて行くのである。在庫総数が増える割には、種類が増えないと言うパラドックスが生じてくるのだ。
薬局の先発品の在庫が300種類あるとして、そのうち２００種類にジェネリックが存在しておりそれを在庫させると500種類の薬剤を置く必要がある。ひとつの先発品に複数のジェネリックとなると、どんどんとその在庫は増えて行き薬局のスペースをツブしてしまうのである。

そんなん、何種類も置いておく必要はないじゃんと言うかも知れない。
しかし、患者さんは自分の内服する薬に対してかなり強いこだわりを持っている人が多い。
独断と偏見で言わせて貰えば、変な（聞いた事のないような）ジェネリックを飲んでいる患者さんほどその薬に対するこだわりが強くて、そういう患者さんほど無理を言って薬局にその薬を置いて貰おうとする癖に（医者の所に来る前に、先に薬局へ言って言質を取ってから病院に来る人が結構居る・・薬局としては断れないので辛いところだろう）、急に受診をしないようになって他の病院へ変わったりするのである。

在庫管理の煩わしさだけではない。

例えば薬剤師の判断で変更した場合、薬剤師は後でドクターの方にメバロチンをジェネリックＡに変更しましたと言う連絡をしなければならない。これだって数が多くなればとっても労力を必要とするのではないかと思う。


少し話題を変えて、薬剤に対する患者さんのこだわりの例をあげてみよう。
血圧の薬で、ノルバスクと言う降圧剤がある。これは塩酸アムロジピンと言う薬剤の商品名である。ファイザー製薬から発売されている先発品で、恐らく降圧剤の中での処方はダントツではないだろうか？同じ塩酸アムロジピンでアムロジンと言う薬がある。これも同じく先発の住友製薬から発売されている。この2者は当然同じ薬である。先発とジェネリックのような関係ではない。
薬剤もつなぎの部分も全部同じなのである。

メーカーの力の関係でシェアは圧倒的にノルバスクが多い。当院もそういう関係で（他所から移ってくる患者さんの事を考えて）ノルバスクを採用しているけど、たまにアムロジンを飲んでいる患者さんが当院へ変わってくることがある。その場合、この２つは全く同じ薬ですと説明をしてノルバスクに変更させていただくけれど、それでオッケーの人が多いけど、中には全然ダメの患者さんが居る。試しに変えてみようと言って、とりあえず処方してみても「先生やっぱり前のでないとあかん」と言って結局アムロジンへの処方へ変更した。そういう患者さんは1人や2人では足らない。
そう言うわけで、当院のお隣の調剤には同じ塩酸アムロジピンなのに、ノルバスクとアムロジンと言う２つの先発品が在庫されているのである。この薬にはまだジェネリックが登場していないが、もし登場したなら塩酸アムロジピンの在庫が更に増えることになる。

後日談だが、その患者さん別の病気で他所の病院へ入院した。
その病院にもノルバスクしか無かった為に、ノルバスクへ変更されたれど、入院中は薬をヒートから出してばらばらにして朝飲む薬として他の薬と一包化（あのセロハンみたいな袋に全部入れること）していたので変わったのに気づかなかったのだ。（ノルバスクとアムロジンはヒートのデザインは全然違うけど、錠剤そのものは見た目はもちろん全く同じなので）。思いこみと言うのは強い者である。

他にも、大鵬薬品が出している喘息のユニフィルと言う薬は、他の（ジェネリック）メーカーが作っているユニコンと言う薬を買い上げてそれを大鵬が作ったヒートに入れて売っているのである。それなのに薬価はユニフィルの方が高い。
同じものなら（この場合、先発と後発の違いはなく、つなぎの部分まで当然同じなので）安い方がと言うことで当院ではユニコンを採用している。

同じくスリを何種類も置いていても無駄ジャン。ねえ。

ところで、ジェネリックと書いているけれど、以前はよく後発の薬剤はゾロ品と呼ばれていた。
これは恐らく、特許が切れるとゾロゾロと出てくるところから付いたのではないかと思う。
ジェネリックの方は薬剤の一般名と言う意味のgenerlから来てるんだろうね。
僕が医者になった頃は、ゾロを処方するのは内科医の恥と言われていた時代もあったのに、世の中変わってきたものだ。