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カテゴリ:オレにも言わせろ!
今日は久しぶりに仕事関連の日記を書く。
ジェネリック薬に関する事は、以前に色々と書いたが、今日はその続き、というか最近の診療で経験したこと。 当院のような院外処方の診療所の場合は、以前なら医者が処方箋にサインをしていれば、薬局が先発薬からジェネリック薬へ変更する事が可能だったが、先の改正で医者が処方箋にダメのサインをしてない限り、薬局は独断でジェネリックへの変更が可能になった。 要するに、前はサインをしてある患者だけ変更可能だったのが、現在はサインをしている患者だけ変更できずに、他の患者さんは全員薬局の独断で変更可能になったのだ。(処方箋には原則としてそういうサインをしていない)。 要するに、医者に言ってもなかなかジェネリックへの変更が促進されないので、国は業を煮やして薬局が独断で変更できるようにしたのである。その上で、薬局に脅しをかけて、薬局の処方箋にジェネリックが入っている処方箋の割合が多ければ多いほど点数が付くようにしたのである。点数を減らされては大変だから、薬局は必死扱いて患者さんにジェネリックへの変更を促すようになる。 そらなあ、患者さんは「ジェネリックに変更した安くなりまっせ~何、中身は同じもんですさかいに・・」と言われるとその気になるわな。 これは、病院の隣にある門前の調剤薬局と、そうでない街の中にある調剤もやっている薬店ではまた態度が違う。 門前のところは、当然病院にお伺いを立ててくるが、そうでない薬店などは医師の意向などは無視して変更に突っ走っている。 当院でも、お隣とはことあるごとに話し合って、ある程度の種類の薬は、原則としてジェネリックを処方しよう、そしてその場合にはこの名称の薬剤を使おうと打ち合わせをしている。 そうしないと、変更した後に薬局は、医師の側にこの薬をこれに変更しましたと言う通知をしないとあかんので、その手間が大変だし、医師のほうはその通知に基づいてカルテの記載を変更しないとあかんので大変だからだ。 ところが、薬店の中には勝手に知らないジェネリック薬に変更した上で、その通知をしてこないところがある。 患者さんと会話している時に、なんかおかしいと思って初めて薬が変更されているのが分かるのである。 これっておかしくないか? それに、1つの先発薬に対して、ジェネリック薬は何種類もある。 例えば、メバロチンと言うコレステロールの薬のジェネリック薬は10社近くが出していて、みんな名称が少しずつ違うのである。1つの薬局が1つの先発薬に対して何種類もジェネリックを置くのは、仕入れの面からも保存のスペースの面からも合理的ではないので、たいていは1種類置いてあるだけなのである。だから、どこの会社のジェネリックを置いてあるかは薬局によって違う。 先日こんなことがあった。 高血圧、糖尿病、心臓病などで多くの薬を処方した患者さんがいた(原則として僕はジェネリックを積極的には使わない)。その患者さんがAと言う少し離れた薬店へ行き、何種類会の薬がジェネリックに変更されていたのを偶然会話の中で知った。薬店から変更の通知がなかったので、電話をして文句を言って連絡してもらえるように言った。 そしてカルテの記載を連絡された薬に変更していた。 次回受診時、その変更されたジェネリックの名前で処方した。ところが、今度は患者さんは当院の隣の調剤を受診。 そこでは、同じジェネリックが無くて、一部は違うジェネリックに、そして一部は先発品に戻された。 だから、1度書き換えたカルテの記載をまた元に戻して変更。 何でこんな手間をかけなあかんの? 普通に診療しておれば何も問題ないのに、こんな病気とは関係ないところで何度も手間を取らされないとあかん。 それは全て医者のストレスになる。 もっと問題がある。 例えば、Aと言う先発薬を、Bと言うジェネリックに薬局の独断で変更したとしよう。 前に書いたように、ジェネリック薬と先発薬は完全に同じ物ではない。 最近でこそ、全く同じ物も出ているが、薬効成分以外のつなぎの部分では違う物が入っている場合が多い。 もしですよ、そのBと言う薬で患者さんに命に関わるような副作用が出た場合、一体その責任は誰がとるのか? 処方した医者か、薬剤師か?こういう場合はたいてい医者なのだ。 自分が出そうと思った薬でそうなったのならともかく、勝手に変更された薬でそんな事になったら納得できへんわと言うが偽らざる心境だ。 ジェネリックと先発薬は完全に同じではない。 例えば、喘息の薬であるホクナリンテープと言うのがある。これは気管支拡張剤の貼り薬で、皮膚から少しずつ浸透していくのだが、その少しずつ浸透していく仕組みに、マイクロポアシステムだったか、そんな名前の特殊な機構があるのだ。ところが、薬の特許は切れてもそのマイクロポアシステムの方の特許は切れていないので、ジェネリックにはそのシステムが採用されていない。それ故、薬剤は少しずつ浸透していくのではなく、速やかに浸透して速やかに消失していく。それ故、初期の部分では血中濃度が上がりすぎて、副作用が出現したり、本来薬が効かないとあかんはずの明け方には(喘息の咳って明け方が多いでしょう)効果が無くなって症状が悪化したりするのである。 こんなブログも参考にしてみよう 更に供給の問題がある。 当院では、Cと言う血圧の薬を出すときに、Dと言うジェネリックを使っていた。 そしたら、先月だったかいきなり、このDと言う薬は製造中止になったのだ。 ジェネリックを作っている会社は、売るだけ売ってある程度のもうけを得たり、売っても採算が取れないとなるとすぐに製造を中止したりする。自分たちが開発した薬じゃないので思い入れなど無いし、患者や病院への迷惑なんぞ考えてないのだ。 どうです、単にジェネリックにしたらお金が安くなると言う裏にこんな色んな問題があることをご存じだろうか? 何度も繰り返すけども、厚労省がジェネリックの使用を促進するのは、患者さんの健康を心配したり、財布の中を心配しての事では断じてない。 単に医療費を安く上げようと言う経済的側面からだけの考えなのである。 全ての薬にジェネリックがあるわけではない。特許が切れた薬で、尚かつよく売れている薬じゃないと作られない。 ジェネリックは一部を除けば、先発品と完全に同じと言う訳ではない。 薬局がジェネリックを勧めるのは、患者さんの健康を心配したり財布を心配したりの事ではない。 自分たちがそうしないと点数を減らされると言う経済的な理由からだけだ(もちろん、それは厚労省に脅されている訳なのであるが)。 ジェネリックに勝手に変更して起こった副作用に関して一体誰が責任を持つのか? 最近では、先発薬を作っている大手製薬会社がジェネリックの参入に乗り出した。 例えば、明治がアムロジピンと言う日本で一番使われている高血圧の薬(もちろん明治の製品ではなくて、他社の大手製薬の製品)のジェネリックを作っているのは有名な話しである。 そうやって大手では、先発品で儲けて、更にジェネリックでも儲けようとしているのである。 大手が参入すれば、今までの中小ジェネリックの会社も段々と淘汰されていくに違いない。 そうなれば、供給と言う面ではある程度安定はすると思うけども、薬局などの仕入れる側からすれば、安く仕入れる競争が無くなってしまうのだろう。そうやって日本の製薬会社の寡占状態は進んでいく。 僕自身の意見は、ジェネリックを使う必要は無いと思っている。 医療費を減らしたいのならば、発売後10年近くなって特許が切れた先発薬の薬価をジェネリック並みに下げれば済む話である。 そして、患者さんの重複受診とかもっと無駄な部分を削っていくべきなのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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