珍客来る
今日は朝から凄い天気だった。雨はそれほどでもないけど、暴風雨のような風。雨が真横に降っているのは久しぶりに見た。小学校の立哨当番だったが、出て行った途端に傘を差す方向を間違えて、一瞬にして傘が死んだ。まあ、昼からは風はある程度おさまって、シトシト降りの梅雨らしい雨になったが、蒸し暑く気分が悪く目眩の患者さんが多かった。多いと言えば、インフルエンザがまた小流行している。B型だけでなくて、A型も居る。そして夏風邪の手足口病やヘルパンギーナ、溶連菌感染症も多い。夏の病気と冬の病気が同居して、無国籍状態いや、無季節状態である。さて、ここからが今日の本題。昨日の昼頃に、配偶者が「どっかで子猫が鳴いているような音がする」と言っていた。その時に僕には何も聞こえなかったので、うちの斜め後ろにある空き地あたりでネコが子供でも産んだのでは?と適当に答えていた。しかし、今日の昼休みに書斎でPCの前に座っていたら確かにネコの声がする。それもかなり近い。よく考えたら、空き地は結構離れているので声が聞こえると言うことは有り得ないのだ。窓の外を見て驚いた。書斎のすぐ北側は西半分が田んぼ、東側が当院の駐車場である。田んぼは駐車場からかなり低いところにあって、更にフェンスもあるのだが、その田んぼの中に子猫が落ちて駐車場の壁のところにくっつくように泣いているではないか?この雨の中、昨日の午後からずっと田んぼに落ちていたのだろうか?(僕は、昨日は食事して直ぐに寝てしまったので書斎には居なかったのでその時に泣いていたかどうかはわからない)。雨がどんどん降って田んぼに水が貯まってきているし、このままじゃおぼれてしまう。そのころには鳴き声を聞きつけた隣の調剤の女の子も外へ出てきたけど、なにぶんフェンスもあるしネコを引き上げる訳にはいかない。仕方ないので雨の中、マウンテンパーカーを着て外へ出て行き、フェンスを乗り越えて田んぼにドボっと浸かってネコを救出した。雨と田んぼの水にぐっしょり濡れて、大きなネズミ程度の身体は更に小さく、目やにがついて身体はぶるぶると震えている。よほど怖かったのか、人間を見ても逃げないし僕の股の間に入ってこようとする。タオルで身体を拭いてやって、持ってきたミルクを舐めさせて見るけど飲まない。診療時間も迫ってきたし、我が家はネコを飼える構造じゃないし、僕ら夫婦は揃ってネコアレルギーがあるので家の中には連れて入れない。仕方ないので駐車場のエアコンの室外機の影で雨の当たりにくいところへ置いてきた。しかし、気になったのでしばらくしてガッコから帰ってきたミドリちゃんに、あそこにネコが居るよと教えてしまった。なんか、嫌な予感はしたんだけどね~。彼女は弾丸のようにすっ飛んでいった。背中に「うちでは飼えないよ~」と言葉を投げつけておいたのだが・・。彼女の反応は凄かった。ネコを抱きかかえて我がやの自転車置き場に連れてきて(屋根があるので濡れない)、お腹が空いてるだろうと言って持ってきたのがいきなりバナナとおかき(爆)。そんなものは食べないよ~せめて鰹節にしたら?と助言をしたら、今度は僕が毎朝使っている大きな鰹節の袋を持ってくるから、それは汚くなったら困るので小さく小分けした奴があるよと教えてあげる(本当は、そっちはかなりの高級品らしいが・・)。次に見に行ったときには、お友達のフーカちゃんと一緒に、ネコにはリボンの首輪をつけて、段ボールの箱に入れ、箱の中には脱脂綿を入れ、鰹節のお皿とミルクのお皿を入れて、更に寂しいだろうと自分のネコのぬいぐるみを何個も並べていた(爆)。おまけに逃げれないように首にはヒモまで結わえてある(爆)。ネコは繋いで飼う動物じゃないことを教えて、うちでは飼えないので既に1匹ネコが居るフーカちゃんの家で飼えないかどうかを聞いて貰う。でも、やっぱり今のネコとの相性もあると言うことでフーカのおばあちゃんに上手く断られてしまったみたいだ。途方にくれるミドリちゃん。家の中では絶対に飼えないので、例えばこのネコには野良で育って貰うことにして、自転車置き場に時々餌を置いて寄って貰えるようにしたらと提案。彼女は渋々納得した。しかし、そのはかない望みは、帰ってきた配偶者の「捨ててこい~」と言うひとことでもろくも崩れ去ってしまう。確かに彼女の言うとおり、まだ小さいネコだし家から離れて野良で独立するのは不可能かも知れない。結局隣の空き地にネコを段ボールごと置いてきた彼女は、目が腫れて目の下にクマが出来るぐらい泣きはらしている。許せ、ネコの存在を教えてしまった父ちゃんが悪かった。気になったので、夜に医師会の会合で出かける時に空き地をそっと覗いてみる。ネコはそのまま段ボールに入って、ミドリちゃんがかけてやったタオルにくるまったまま動かずに居た。この空き地じゃあ誰も気づいてくれないかも知れないし、カラスにおそわれるかも知れない。色々考えて、我が家のお隣の矢野のおばちゃんの駐車場の隅にその段ボールを置く。矢野のおばちゃんと言うのは、もともとの当院の持ち主の未亡人。要するに、ご主人が開業して医院をやっていたけど、病気で継続出来なくなったので、自宅部分だけ切り離して残し病院部分だけを僕ら夫婦が買い取ったわけだ。だからおばちゃんの敷地とは小さな扉1つで繋がっているし、配偶者と職員の車はおばちゃんの家の駐車場に置かして貰っている。(この駐車場から外へ出てから空き地へ行く訳である)この駐車場なら子供も見に行きやすいし、何よりもこのおばちゃんはネコ好き。もちろん、おばちゃんの家にはヒマラヤンの飼い猫が1匹居るけど、一人暮らしのおばちゃんの事、まかり間違えばおばちゃんに拾って貰えると言う深い計算もあるのだ。会合から帰ってきて、ミドリちゃんの部屋へ行き泣きはらして涙を付けたまま寝ている彼女の肩を抱いて、ネコがおばちゃんの駐車場に居る事を教えてあげると彼女の目がぱっと、そして次ににや~っと輝いた。明日の朝、5時に起きて見に行く~って、そんな極端な事をしたら駄目だよ。あくまで母ちゃんには内緒だからな。さりげなく、したたたかにやるんだよ。この子に未来はあるのでしょうか?皆様も一緒にお祈りください。