私は子はおらんが、子をなすかどうかもわからんが・・・
生まれた子にはぜったい「お母さん」と呼ばせとうございます。

田舎もんのせいなのですかね。
「ママ」とか「パパ」とか、サブイボのたつ響きなのだわ。
まあ・・・良いとこの子っぽいかんじもするけどね。

いや、私も面白がって
「ママ～ン、パパ～～ン」と呼ぶことはあれど、やっぱり一番しっくりするのは
「オトウサン、オカアサン」でございます。

考えてみたら・・・
私が小さいころ、周囲で自分の両親のことを「ママ　パパ」呼ばわりする友達はおりませんでした。
いや、そのような呼び方が存在することが存じておりました。
しかし・・・
あれは、TVの中の頭にリボンを結んだ都会の娘が発する言葉だと理解しておったのでございます。
ええ。
田圃のあぜみちに寝転がって、オタマジャクシをすくいまくる周囲の田舎っ子の中には、
一人もいなかったと断言できます。
ましてや・・・
それは男子の使う言葉ではない！と思っていたのですがね。

しかし。
ある日。
その考えは間違いであったことに気がついたのでございます。

それは、私がまだ小学生のころ。
家に同居していた当時未婚の叔母に見合い話が次々と持ち上がった時分のことでございます。

叔母の見合いは何度か行われた模様でございました。

ある日、「今日は●●ちゃん（叔母）の見合が家であるからね」とお手伝いさんに聞かされていた私は・・・
じっと薄暗い廊下にて、その男子とやらを見てやろうとじっと隠れておりました。

どうやら、見合い相手の訪問の時間になり、玄関のインターフォンが鳴りました。

いつもトレーナーにジーパンなのに、なぜかピンクのふわふわのワンピースに着替えた叔母と
必要以上に塗った祖母と、そしてなぜか家でスーツを着込んだ祖父が玄関に出迎えに。

入ってきたのは、良く言えば育ちの好さそうな男子と品の好さそうなご両親でございました。
叔母は、いつもより高めの声であいさつなどを交わしております。

「うげ。青瓢箪め。」

くそ生意気な子供の私は、その青白い男子が一目で気に入りませんでした。
いやなんか「お坊ちゃん」を絵に書いたようなおっさんでしたの。

見合はどれほど行われたでしょうか？
座敷でごにょごにょと話をし、ときどきささやかな余所行きの笑い声などが響いたりいたしました。

そして・・・見合いが終了。

私は再び、廊下の影から玄関に再び現れた「青瓢箪」を見ておりました。
叔母は、なんだかその「青瓢箪」を気に入った様子で、青瓢箪もまた叔母を気に入った様子で、
その場は、妙になじんだようなリラックスムードにあふれておったのでございます。

「むぅ。あいつが●●ちゃん（叔母）の旦那になるっちゅうことは・・・
　わたしは、あの青瓢箪をオジチャンなどと呼ばねばならんのか？？？
　なんだなんだなんだ。
　だまされんなよ！●●ちゃん！あいつはロクなやつじゃないぞ！←根拠のない勘」

幼い私の心中は穏やかではございませんでしたが・・・
私にどうすることができる事態でもございません。
廊下で、ぐっと小さな拳を握りしめ「青瓢箪め」と憎々しげにつぶやくほかなかったのでございます。

しかし。
その帰り際。
その和やかだった空気を一気に変える事態が、起こったのでございます。
暇をつげて、玄関の引き戸をカラカラと開けたその瞬間・・・

「じゃあ、失礼します。
　あ、ママ、パパ、ぼくが車を運転しますから。」

何気ない一言でございました。
しかし、ジャスミン家全員が凍てついたのでございます。
「ママ　パパ」たったその一言なり。

いや・・・
それは習慣の違いでございましょう。
なんの違和感なくそう使って来られた彼には、なんの悪気もなければ落ち度もございません。
ただ・・・習慣の違いというのは結構大きなものでして。
田舎の我が家にて「ママ　パパ」はほんに軟弱な呼称で、男子の使うべきにあらぬ言葉なのでした。

叔母の顔から一瞬の笑顔が消えたのを、幼い私は見逃しませんでした。

そしてこの私も・・・

「３０近いオッサンが！！！！
　３０近いオッサンが！！！！！
　ママだって！！！！！！パパだって！！！！！！！！！」

・・・とかなりのショックを受けて思わず廊下に膝をついてしまったのでございます。

それを機に。
世の中には、男女問わず年齢問わず、己の両親のことを「パパ　ママ」と呼ぶ習慣のある人々が普通に存在することを知りました。

あ、見合い？もちろん破談でございました♪

しかし。
未だに大の大人が（いや子供でも）「うちのママがね～」なんて言ってるのを耳にすると・・・
「ぎょ！！」っとしてしまうジャスミンなのでございます。

いや。
私の偏見ですけどね。。。。


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本日の装い。コレ。