スズキの個人商店からの脱却
今日の日経新聞で、軽自動車のスズキについて記載されていましたので、感想を。要は、今まで鈴木氏がワンマンでやっていた経営体制を、鈴木氏がいなくても経営できるような体制へ移行しようとしている現状をリポートしたものです。ワンマン社長という点に興味が惹かれました。スズキについてあてはまるのかはわかりませんが、ワンマン色が強い会社(オーナー系企業)の特徴として、(1)社長の態度が横柄であるケースが散見されること、(2)かなり年を行っても(イメージ的に70歳以上)、まだ社長をやっている(そして昨今ではM&Aにおびえている場合も見られる(苦笑))、(3)幹部がイエスマンあるいはお飾り的な印象が強いこと(実質、社長の言ったことを粛々とこなす役割?)、などがあげられるでしょう。これらの条件は、資料を見たり、実際にお会いすればそれなりにわかることだと思います。ワンマン社長でそれなりに業績をあげるとマスコミでカリスマ経営者的な扱いを受けることがあります。特に4-5年前は日本が不況で、企業も構造改革が急務で、一人の経営者がトップダウンでスピード感をもって対処することが最適だった時代背景もあったと思います。だからといって、別に一人に権限が集中した会社が良いとは必ずしもいえないと思います。社長がいなければオペレーションが回らない社長リスクがあるからです。会社をみるときに、経営者の能力もそうですが、組織としての能力を測ることも大切なのかと思います。つまり、前述の(3)と関係しますが、その社長がいなくても経営ができる人間がどれだけ育てられたのか、という点です。「社長の属人性に頼った経営から、組織的に運営できる経営へ」という課題は、人材の育成、望ましい企業文化への変革といった答えのない領域のものであり(投資家的にはリターンが見えにくく理解しにくい領域)、だからこそ、どの時代でもいろいろな形でソリューションが提示されてきたし、これからもされていくのだろう、と思いました。===日経新聞からの引用===スズキどこまで強いか(下)「鈴木商店」転換――改革と継承、調和カギ。2006/08/26, 日本経済新聞 朝刊, 11ページ, 有, 1427文字 「ワンマン経営が二代続くと会社はだめになる。次の集団指導体制をどう機能させるか」。鈴木修会長は最近、こう漏らす。一九七八年に社長に就任。軽自動車専業だったスズキを世界で存在感のある小型車メーカーへ脱皮させたが、今や七十六歳。バトンタッチのタイミングを見計らう時期に差し掛かった。 新車開発では世代交代が着実に進む。世界戦略車「スイフト」の開発は津田紘社長―小野浩孝専務のラインが指揮。欧州にターゲットを絞ったクルマ作りや、世界四工場での同時期生産で、成功を収めた。鈴木氏の娘婿である小野専務は経済産業省を経て、〇一年に入社。開発畑の津田社長も本社勤務が比較的短い。「従来のスズキにどっぷりつかっていた人ではできなかっただろう」(鈴木会長) 一九七九年に社長として鈴木氏自らが開発を指揮した軽自動車「アルト」は四十七万円の低価格を武器に軽市場を席巻し、軽首位の地位を固めた。ところが、この強烈な原体験が、その後のクルマ作りを縛ってしまう。せっかく開発部門がアイデアを出しても、生産部門が「高コスト」を理由に退けてしまう場面が増えたのだ。「スイフトの成功でスズキのクルマ作りは変わった」。スイフト開発にかかわった中堅社員は口をそろえる。 しかしクルマ作りの変容はスズキの生命線である低コスト生産ノウハウを形骸化させるリスクもはらむ。 「なんだこの工場は」。昨秋、めったなことでは表情を変えないのに、海外新工場の図面を見て雷を落としたことがあった。指摘したのは一メートル余分な天井の高さや生産ライン脇の五十センチのスペース。天井が必要以上に高いと工事費だけでなく照明代もかさみ、ライン横のスペースは部品在庫や従業員の余分な動きを増やしてしまう。いずれもコストの押し上げ要因になる。 そこで、更衣室や倉庫を工場棟と併設させて配線工事を減らす手法などを具体的に指示。当初は「四千億円は必要」との報告を受けていた〇六年度の設備投資額を二千八百億円にまで減額修正させた。 「スズキはいつつぶれるかわからない」。一円単位でコストを削っていく企業風土と強固な財務体質は、一九五〇年代の労働争議、七〇年代の燃費規制と二度の危機を肌で知る鈴木会長のリーダーシップで形作られた。ところが海外での戦線が拡大するなかで、こうした風土がどこか薄れたと感じるようになっていた。 今年四月からの新経営体制では、組織を引き締めるため様々な仕掛けを施した。主要役員には販売、生産、技術など複数部門を担当させ、経営者的な視点を養わせるようにした。担当部門で成果をあげられなかった複数の役員は降格させ、信賞必罰を明確にした。全社を自分で掌握するオーナー型経営から集団指導体制への移行に向け、布石は打った格好だ。 約五万の販売委託先を束ねる求心力、大手を相手に一歩も引かない巧みな提携交渉術――。低コスト生産以外にも継承しなければならないノウハウは多い。 慢心をいさめようと、「スズキは自動車業界では中小企業」と常々口にするが、スズキは今や四輪車だけで世界で十六工場を展開し、連結売上高三兆円をうかがう大企業だ。膨れあがった組織をコントロールする集団指導体制に、鈴木会長が体現するスズキのDNAをどう埋め込んでいくか。「鈴木修商店」からどう脱却するかがスズキの運命を決める。 この連載は小口道徳、江村亮一、橋本隆祐が担当しました。【図・写真】ワンマン経営からどう脱却するか(9日、東京都千代田区)