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2007.05.14
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先日お伝えしたように、このたび富山で面白い経験をしてきた私達。

富山駅で親戚一同が集結し、まるでミステリーツアーの如く始まった今回の旅ですが、どうやらもてなしてくれる富山の人々の中ではすでにスケジュールが完璧に出来上がっている様子。翌日のお昼の手配まで完了済みというではありませんか。

車に乗せられてまずは大叔父宅へ行き昼食。

その後は夫の祖父が生まれ育ち、義母らが子供時代を過ごした場所へ移動。

その後はダムを見物。
それ次は化石の資料館へ連行。しばし見学。

車を何台も連ねて総勢20名を引き連れてこれらの場所に行って下さるのですよ。頭が下がります。

しかし、
義母らはせっかくの懐かしい土地をもう少しゆっくり見て歩きたかったのが、次の予定のため後ろ髪を引かれながらその地を後に。

おまけに小さな子供達は、「今のところはつまんなかったね」などと言い出す始末。

私達は私達で、なかなか良い場所なのでじっくりと散策などしてみたいし、おまけに誰もいないパークゴルフ場などもあったのでそこで遊びたい気持ちは山々だったのだけれど、富山の人々の用意してくれているプログラムをむげにする訳にはいきません。

さて、
招かれた方としては、翌日はお昼をいただいたら解散だと思い、めったに来ることのできない富山の散策やらお土産の購入などを思い描いていたのでした。

しかーし、
人生思うようにはいかないものです。

翌日も午前中は綿密なスケジュールを終え、豪華な昼食もいただき、いよいよお開きかと思いきや、連れて行かれたのが大叔父の家。

その日私達夫婦は金沢に宿泊予定だったのでどんな電車に乗っても一時間ほどで行くことがでるのだが、関西方面に帰る御一行様の列車の時間は夕方の6時。

察するに、どうやらその時間まで家に軟禁らしい。

まだまだ日の高い午後。夕方まではかなりの時間があります。

しかし、招く側としては客人を放り出すまねなどできないらしく、こうして家でのんびりしてもらおうと考えたのでしょう。風の通る涼しい広いお部屋で、お茶もお菓子の用意もふんだんになされており、困ることなど何ひとつありません。

・・・でも、
困ってしまうのが超越できない凡人なのだ。

手厚いおもてなしに深く感謝しながらも、みんな密かに落胆しているのがおかしい。

「ああ、予定が、思い描いていたその後の予定が皆崩れていく・・・。」

それでも時は流れ、ようやく八尾を後にし富山駅へ向かう時間となりました。一同の顔に安堵の表情が広がります。

駅に到着し、精一杯のお礼を述べようとしたその時、ちょっと車を置いてくるからと行ってしまった富山の人々。

もしかしてもしかすると、
最後の最後まで見送りしてくれるんじゃなかろうか・・・。

義母が「あんたたちはもういいから」と行かせてくれたので、私達はそこで失礼したのだが、

結局その後、
富山の人々はわざわざ駅の反対側の駐車場に車をおいて、列車の発車時間まで1時間以上あったにもかかわらず付き合ってくれ、そして最後には入場券を買ってホームで列車が動き出すまで見送ってくれたのだそうだよ。(さすがに列車を追いかけてくることはなかったらしい。お歳だからね。)

いくら「もうここでいいですから」といっても

「いいっちゃ、いいっちゃ~」(いいから、いいから)で済まされてしまったらしい。

それでも義母らは何とか念願のお土産を買いに行き、そして車内で食べるお弁当などを仕入れて戻ってきたところ、何と、富山の人々は富山名物の「ますのすし」を人数分用意していたらしい。

おいしいけれど、嵩張って重たいそれをいただいて、ほうほうの体で帰宅したのだそうだ。

大変なおもてなしに度肝を抜かれた2日間だったのでした。

***

しかし、
いわゆる都市部と郡部では、現代でもおもてなしの仕方にはかなり温度差があるようです。

都市部でドライに生きていると、
人様に何かを差し上げるにしてもついつい「こんな重いのをあげたら迷惑じゃないだろうか」だとか「引き止めたら迷惑じゃないだろうか」という考えが真っ先に思い浮かんでおもてなしをするのにもついつい躊躇してしまって腰が引けがち。

しかし郡部ではまず、
「客人を手ぶらで帰すわけにはいかねぇ」とばかりに重たいお土産を持たせ、「客人には下へも置かぬ扱いを」とばかりに徹底的にもてなして下さる。謙遜ではなく、どんなに遠慮しても見逃してくれることはまずありません。

昨年、出張で東京から遠く離れたある郡部の町へ行った時のこと。迎えてくださる方が今回の富山と同じように仕事以外にもギチギチにスケジュールを組んでいるではありませんか。同行の外国人をもてなそうとしたらそのようなスケジュールになってしまったのでしょう。

おかげで板挟みになった私は到着後トイレにも行けずに連行されるハメに。

私は朝早い飛行機で東京を発っているので、仕事が終わる頃にはもうクタクタ。はよホテルへ帰って寝たいのだが、宴席を用意してあるからどうしてもと押し切られ夜11まで付き合うハメに。同行のガイジンも、ベジタリアンの上夕食は取らない生活をしているとさんざん訴えたにもかかわらずです。

その時は1泊2日の出張だったので、着替えも最小限しか持たないで鞄ひとつで行ったのだが、まさかまさか、重たい名産の陶器などをいただいて帰るハメになるとは。どんなにどんなに固辞しても、そこでは遠慮ととられてしまうようだ。

bag.gif

同行のガイジンなぞ、もっと大きな頭にでもかぶることができそうな鉢をもらっていたよ。1ヶ月以上海外を回る仕事なので、彼らの荷物は半端ではない多さなのだが、迎える方にとってはそんなことなどどうでもいいのさ。ただ、外国から来た客人を手ぶらで帰らせるわけにはいかない、それだけなのだよ。

翌日も出発までに町を案内してくれたのだが、私達を迎えてくださった方は町の有力者らしく、町角で誰かに出会うたびに私達にお土産を下さるのだよ。

300年前からあるお味噌やさんからお味噌をいただきました。
重いです。

立ち寄ったお寺では羊羹をいただきました。
重いです。

私はいいけれど、ガイジンにお味噌はむずかしいかもしれませんね。
「これどうやって食べるの?」ってアンタ、ヨーロッパではだしを取ることは難しいぜ。

羊羹は、私でももてあましてしまいます。
それなのに、4本もいただいたガイジンは・・・。

鞄ひとつで行って帰ってこようと思ったのに、大変な大荷物で東京に降り立ったのでした。そのガイジンの荷物もあるし、さらにはいただいたお土産もあるので本当に大変だったのさ。重いものを担いできたので指も腫れる始末(私はリウマチなので重いものを持つとこうなるのだよ)。

その後、
私とではなかったけれど、以前にこの町に行った他のガイジンに訊いてみました。もしかして宴席が設けられて重たいお土産をもらわなかったかと。

やはりその大きな鉢はいただいたそうだ。
しかし、もって帰るのが億劫だった彼女は、故意にホテルにおいてきちゃったのだそうだ。

その彼女と埼玉県某所に行った時のこと。
私達のために控え室が用意されていたので、午前中の仕事を終えたらサンドウィッチでも買ってきてそこで食べようと思っていたのだが、いざ戻ってみるとそこには主催者が豪華なお弁当を取り寄せて待っているではありませんか。

私達はぶったまげたよ。

見事な日本料理だがガイジンにはいささか難しく、案の定鮎の甘露煮におそれをなしていたぞ。

私もいい加減に疲れていたのでテキトーに過ごしたかったのだがそれもままならず。

結局、休める時間だったのに休まる暇もなく私達は午後を迎えたのでした。

おまけにその席で「日本の御土産に」といただいたのが「番傘」。大きいです。重いです。あれをいただいた時の彼女の絶望的な表情は忘れないよ。

結局、その番傘はそのとき同行していたスタッフが一旦家に持ち帰り、そしてそこでももてあましてついには実家へ送ってしまったのだそうだ。

しかし、あの番傘は彼女の許にはいかなかったのだけれど、その後しばらく経ってもあの番傘のことが話題に上るので、「日本の御土産に」という番傘をくれた方の目論見は大成功だったと言えるのかもしれません。彼女にとっては一生忘れることのできない御土産となったのですから。たとえそれが手元にはなかったとしても。

人をもてなすことは何と難しいのでしょう。

私は考えました。

印象に残るおもてなしをするには、もてなされる側の気持ちなど一切考えてはいけないのかもしれません。

小心者の私にゃ、
とてもじゃないができねぇ。







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最終更新日  2007.05.14 18:03:11



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