テーマ:映画ニュース(1428)
カテゴリ:映画の話
本日6月9日の中日新聞朝刊の「エンタ目」に映画「マイ・バック・ページ」について、 山下敦弘監督「マイ・バック・ページ」(名古屋・名駅のミッドランドスクエアシネマほかで公開中)が評判である。 物語の軸は1971年、自衛隊朝霞駐屯地で起きた「赤衛軍事件」にある。銃奪取を目的として赤衛軍(劇中では赤邦軍)を自称する学生と元自衛官が、駐屯地警備の自衛官を襲って刺殺した実在の事件である。 自称梅山(劇中本名は片桐優・松山ケンイチ)は69年の東大安田講堂攻防戦に触発され、ピークを迎えた「全共闘運動」から、より急進的な武装闘争へと傾いていく。だが、彼の急進性は大学内で求心力を失い、いきどころのない闘争心はパラノイアとして肥大化していく。 一方、東大法学部出身で東都新聞・週刊東都記者の沢田雅巳(妻夫木聡)は駆け出しではあるが、その心情は学生たちの反乱と重なる。閉塞する社会と、秩序を取り戻せ、と軌道修正する新聞ジャーナリズムに違和感を持ち続ける。銃砲店を襲い、銃奪取を成功させた赤邦軍リーダー梅山を名乗る片桐と接触する沢田。危険な関係はジャーナリストとしての使命なのか、それとも昂揚がそうさせるのか、二人の関係はある種の共犯関係を醸していく。 自室に泊めた時、梅山がもともとは音楽少年だったと告白しギターをかき鳴らしCCRの「雨を見たかい」を歌う。沢田は時代を共有する者として共感した。二つの青春が苦くも甘く重なるこのシチュエーションはうまい。 息苦しいアジトでの共同生活。自らの大言壮語と実体のない運動のギャップに追いつめられる梅山。先輩記者中平(古舘寛治)の「あいつはニセモノ、近づくな」の忠告を無視するように梅山に接触し、自らの甘い判断を押しのけ取材という詭弁に転化する沢田。 そして、事件は起こる。直後の危険なインタビュー。沢田は事件の証拠を梅山に求め、自衛官の警衛腕章を託される。思想背景も運動実体も不明な無名集団はあっけなく逮捕される。連座する沢田…。 モデルが全員下獄し、社会復帰している配慮なのだろうが、登場人物たちの自己存在の矛盾と否定という時代のリアリズムを避けている分、何を信じ、何をなすべきなのか、という青春ものの感傷的過去形に踏みとどまるのは致し方のないことなのか。 ディランは、決してセンチメンタリズムで「My Back Pages」を歌ってはいない。
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Last updated
Jun 9, 2011 10:53:22 PM
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