ぽち丸が行く・・・

６日目は食事指導だった



弟夫婦、母、私の４人で栄養士さんから説明を受けた

２７年前、高血圧と高血糖で倒れた父は・・・
１階病室の窓からラーメンの出前を取る大馬鹿野郎だったが（勿論未遂に終わった。匂うからね）
７４歳の母は大変聞き分けが良く、私と義妹がちゃんとメモを取るか背後で見張っていた
本人のモチベーションが高く、且つ自分でも調理する能力があるんだから
買い物の手伝いを抜かりなくやっておけば食事の管理はそんなに難しくないかも知れない

ついでなので成人家族の標準体重と理想の摂取カロリーも聞いた
同じメニューで量を加減して行けたら良いですねとアドバイスを受け
病院の売店で『糖尿病食事療法のための食品交換表』と言う本を買って帰る
２７年前にもこの手の本を見たが、随分と量のイメージがしやすくなっているなと感じた

んが・・・

帰る車の中で弟が栄養士さんを全否定し始める

人に野菜を食べろと勧める人間が全然野菜を食べていない、あの浮腫んだ足を見たか？
こっちは糖尿と昨日今日の付き合いじゃない、肝心なことを説明していないのがバレバレ！
言われたとおりのつまらない生活して１、２年長生きして何が楽しい？　とこんな具合

身長１７８ｃｍ、体重１００ｋｇのヘビースモーカーは父の魂を強く受け継いでいるらしく
真面目に説明を聞いていた義妹を何とか言いくるめて、自分の食事は改善させたくないらしい
家族で一番早く死にそうな男は自分の身体のことをどう思っているんだろう
義妹に対する責任をどう思っているんだろう
是非一度軽く死ぬような目にあって心を入れ替えて欲しい
ああ、でも父の心は最後まで入れ替わらなかった・・・
せめてやる気のある母の邪魔だけはして欲しくないと思う




７日目、今日


見舞いに行くとベッドサイドに今日の新聞があった
先に誰かが面会に来て差し入れてくれたのかと思って聞くと、買ったという


「今日点滴が外れたからちょっと階段下りて行ってみたのよ」

「もう許可が出たの？」


右手の人差し指をピンと立てて唇を押さえるクララ


「・・・あんた、何やってんのよ・・・・」

「へーき、へーき」

「へーきかどうかは心電図見て先生が決めるの！！
　しかも何階段使ってんのよ！エレベーターって物を知らないの！！」

「正々堂々とナースステーションの前通って行ったんだから良いの」

「その先に面談室があるからだよ！みんな無許可で売店行くババアを見張ってるんじゃないの！」

「まぁ良いじゃない。ずっと無線で心電図モニタされてるんだけど、まだ叱られて無いわよ」

「・・・・・・・・」


２７年前の父だったら間違いなく買い食いしているところだが、母はにはその心配は無い
その心配は無いんだけど、なんだか腰が抜けそうになった
おそらく２週間で退院できるだろうと言われて若干調子こいている
今度やったら先生に言いつけるぞと叱ってやった


同じ部屋に元気な大学生のお嬢さんが入院している

底抜けに明るいキャラで病棟のアイドルなんだそうだ
母ともすっかり仲良しになっていて、私と次女にも話しかけてきてくれた
なんだろう、心に垣根が無くって
多少言葉が乱暴（今ってみんなそうかもしれないけど）なんだけれど
そんなの全然許せちゃう明るさと魅力がいっぱいのお嬢さん
明日は外出許可とって合コンだそうで
服を選ぶ彼女の周りで同室のマダム達が
髪はどうするの？ピアスは？なんて楽しそうにおしゃべりしている
看護師さんも、門限だけは忘れないでね～！若いって良いわね！！なんて声を掛けていく

「病気になっちゃってサイテー。でも二十歳は一度っきりだからガンガン楽しみますよ！！」

なんて健康な魂なんだろう、心なんだろうと感心してしまった
私なんかの想像も及ばないような困難の中でも、こんなに輝いている人がいる。凄い

「いい？男なんてね、もぎ取るもんだから！！攻めなきゃ落ちないから！わかった？」

っていつの間にか次女が励まされてるよ・・・（うちの子草食ですが）

きっと母も励まされてるんだろうな


今回のことで



いろんな風を感じる