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La Vie・音楽とともに ~標高1,000mの高原だより~

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March 18, 2006
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カテゴリ:My Favorites・・
本日、わたくしはひとり、片道160km余りの距離にある街まで、車を飛ばしてお出かけでございます。一日わたくしにお付き合いしてくれるのは、麻呂父の愛車AUDI A4 AVANT QUATTRO。わたくしの、1000ccの車では心細いと思った麻呂父が貸してくれました。この車でひとりで遠距離をドライブするのは、初めてでございます。
彼(車は、フランス語では女性名詞、ドイツ語では中性名詞ですが、わたくしはこの車を彼と呼んでおります)は、おめかししているわたくしをどう思ったかわかりませんが、「さあ、今日はよろしくお願いね」と軽く挨拶して乗り込みました。カーナビを、目的地にセット。朝10時に出発です。
普段から乗り慣れている車ではありますが、ひとりで長距離となるとやはり緊張いたします。そんなわたくしの緊張をほぐすように、彼は快音と共にぐいぐいと加速してゆきます。

もちろん音楽も欠かせません。2000年の「日本音楽コンクールヴァイオリン部門」のCDをチェンジャーに入れました。ケーブル受信したNHK-FMの放送をそのまま、知り合いの音楽評論家の方に録っていただいたものです。東京オペラシティまで出かけて観戦した思い出のコンクール、わたくしは、第3位になった大宮臨太郎さんの演奏がお気に入りでございます。この年の課題曲は、プロコフィエフのコンチェルト1番。頭脳明晰なプロコフィエフらしい、クールでかっこよく、計算し尽くされた曲です。そんなプロコを大宮さんの演奏で聴きながら、山道を登ってゆきます。その頃には、同じ方面へ向かうとみられるホンダ車の「お連れ」もでき、だんだん楽しくなってまいりました。
さすがクワトロ。ピタッと地面に吸い付くようにしてカーブを曲がる「足」の良さ、そしてハンドリングの正確さ、アクセルを踏み込んだ時の刺激的なサウンド・・。わたくしの期待に応えてくれる彼の呼吸が、ヴァイオリンの音色の向こうから、更に重なる音楽のように響いてまいります。
・・残念ながらホンダ車は、途中の分岐で左へとカーブしているほうへ吸い込まれていきました。どうぞお気をつけてね・・。
山道を1時間半走った後、車は高速道路へと入り、ここから彼の快進撃が始まりました。
わたくしは、スピード狂ではございませんので、高速道路でもせいぜい100km/hしか出しません。・・が、同じスピードでもガタガタとハンドルが震えるわたくしの1000ccとは違い、彼は余裕の走りで「まだまだいけるよ、どうする?」としきりにわたくしを誘います。
山岳地帯を抜け、平野に入る頃には、「この車にずっと乗っていたい・・」と思うほどに彼と意気投合しました。

彼との親密なドライブの後、午後1時半、無事に目的地に着き、お約束をしていた、わたくしにとってとても大切な方々とお会いしました。
楽しい時はすぐに過ぎてしまいます。しばしの歓談ののち、場はお開きとなり、女性3人で誘い合い、場所を移しておいしいコーヒーとケーキをいただきました。いつも興味深いNさんのお話は楽しく、お医者さんの奥様でいらっしゃるHさんも素敵な方でした。

午後5時45分、Nさんを新幹線の駅までお送りすることになり、AUDIの助手席にご案内いたしました。「まあぁ、とても広いですわね。これならボクちゃん達が眠くなっても大丈夫ですね。」「ええ、けんかもできますよ」と笑いながら車を進めました。Nさんは、すぐに車内に流れているヴァイオリンの音色に気づかれ、「あら、これ、プロコですわね。チャイコフスキーコンクールの時に課題曲でございましたでしょ?イヤと言うほど何人ものこの曲を聴きましたから、耳にこびりついています」ちょうど第2楽章の始まったところで、この楽章は2002年のチャイコフスキー国際コンクールのヴァイオリン部門の第2次予選でも課題曲になっていました。Nさんはその時、音楽雑誌の取材でモスクワを訪れていたのでございます。
約30分のNさんとのドライブ、彼(AUDI)はわたくしたちの会話をどんな気持ちで聞いていたのでしょう・・。ほどなく新幹線の駅に到着し、Nさんは降りられて「さよなら~」と手を振り、構内へ消えてゆきました。再び彼とふたりきりになったわたくし、あたりはもう真っ暗、ここからは気を引き締めて家路へと向かいます。CDをわたくしのアイドルのブラームスのコンチェルトに替え、アクセルを踏み込みました。
帰りの高速道路は、ずっと上り坂が続きますが彼はものともせず回転を上げていきます。わたくしも、下り坂より上り坂の方が得意。往路よりもはるかに早く高速道路を降りることができました。一般道になり、標高が最高地点に達する頃、降っていた雨が雪に変わり、すぐに猛烈な吹雪になりました。自分に向かって無数の白い礫が飛んでくるようなさまは、前方を凝視していても、目が回ってくる錯覚に陥ります。路面も真っ白、いつ滑ってもおかしくありません。スピードを極力控えて慎重に慎重に進みました。普段のわたくしならこのような山道は暗くて恐ろしくてしかも雪が降っているのですから、とても運転できなかったことでしょう。でも、このときは違いました。彼の、しっかり大地を捉える安定性を信じることができたのです。
山道もピークを過ぎると同時に、あんなに激しかった雪が雨に変わり、やっと緊張から開放されました。
やがて街の灯りが見え始め、灯りの中を縫うように走り、家へとたどり着いたのでした。
こうして、わたくしと彼との往復330km、12時間のランデヴーは終わったのでございます。

そう遠くないうちに、訳あって、彼との別れがやってきます。麻呂父もわたくしもまだ言い出しませんが、どちらもわかっていることなのです。でも、今までわたくしは彼のことをあまりにも知りませんでした。今日のこのドライブですっかり彼を見直し、彼と別れることに少し躊躇いも覚えつつあります。麻呂父が手放したがらない理由もよくわかりました。彼は立派にわたくしを守ってくれました。いい車です。さすが堅実なドイツ車。
嗚呼、AUDIよ・・。その社名の語源が、「音」にもつながるという話を以前聞いたことを今頃思い出し、やはり我が家とは縁(ゆかり)のある彼なのだ、簡単に手放してはいけないのかもしれない・・とひとり悩んでしまうわたくしでございます。





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Last updated  March 20, 2006 11:49:05 PM
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