朝、出勤の準備に忙しいひととき、気まぐれにFMをつけると、昨日の放送で聴き逃した
ラロの「スペイン交響曲」が流れてきました。
わたくしが初めて買った記念すべきヴァイオリン・コンチェルトのCDが、この曲でした。
「交響曲」と名前がついていて、オーケストラの比重も比較的大きいのですが、実質的には
ヴァイオリン協奏曲そのものでございます。
この骨太の朗々たる演奏は、誰?これは女性には出せない音色。きっと男性です。
スターンはもっとフレーズを繊細に表現していますし、デュメイの澄んだ神々しい音色とも違う・・。
第3楽章のメランコリックな旋律を、巧みなボウイングで奏で、スペインの舞踊調の節まわしで
聴かせてくれ、こちらも踊り出したくなってしまいました。
第5楽章の、オケと共に明るく歌い上げる旋律は、フィナーレにふさわしい壮大さで、大好きな
楽章でございます。この人の演奏は、全体的にちょっと他の演奏家では見られないフレージングも
あって、とても個性豊かなラロの世界を堪能いたしました。
さて、曲が終わって演奏者と指揮者、オーケストラの紹介。
ええーっ!なんと、ソリストはヴェンゲーロフでした!!
そういえば、彼は若くして、世に名だたる作曲家の、主要なヴァイオリン・コンチェルトはほとんど
録音をしていることで知られていますが、わたくしは彼のスペイン交響曲はまだ聴いたことが
ありませんでした。盲点でしたね。不意を突かれた思いでございます。
それも、爽快な不意打ちでございました。
あの、枯れた音色で聞かせるプロコフィエフとも、静かな情熱を秘めたブルッフの1番とも、
緊張、そしてよい意味での弛緩のカデンツァが心地よいチャイコフスキーとも全く違う、まるで別人が
弾いているようなラロでした。
この曲は、今年の日本音楽コンクールのヴァイオリン部門の本選の課題曲になっています。
ファイナリスト達は、メンデルスゾーンのあの有名なコンチェルトと、この曲のどちらかを選ぶことに
なっていて、10月の本選が今から楽しみですが、ラロを選んだ場合は、全5楽章と長いので、
第3楽章だけは割愛することに、あらかじめ規定でうたわれています。第3楽章がいいのに!
もったいない話でございます!
2001年、第1回仙台国際音楽コンクールの本選でこの曲を弾いた大宮臨太郎さんの演奏時、
第3楽章で終わりだと勘違いした聴衆のひとりが「ブラヴォー!!」と叫んで大きな拍手をし、
わたくしが持っているCDにもその音がしっかり入っています・・・。
皆様、「スペイン交響曲」は、全5楽章。どうぞご記憶下さいね(笑)。