ひょんなことから、急に身近に感じられるようになった、「オピッツおじさま」(誠に勝手ながら、
このように呼ばせていただきます)。
ドイツ古典音楽の神髄を余すところなく表現する彼の世界は、ベートーヴェンのみならず、この
ブラームスにおいても健在でございます。
コリン・デイビス指揮、バイエルン放送交響楽団との録音。
ブラームスが45歳の時に訪れたイタリアで曲想を思いつきながらも、一旦棚上げになったこの曲。
足かけ4年を経て1881年に完成をみました。
20代の頃に書き上げた、若さがほとばしるような第1番とは相対的な、ある意味での落ち着きと、
大人の深い深い情熱に満ちている味わいのある名曲ですね。
ようやくこの曲の良さがわかる歳になりました。
第1楽章。朗々と響き渡るホルンに応えるように控えめに入るソロ。
ヴァイオリン協奏曲の冒頭と同じような、牧歌的な情緒が感じられます。
それはまさにイタリアの明るさを映し出す鏡。なんと瑞々しいオーケストラとピアノ。
自由に、そして大胆に駆け巡るオピッツ氏の粒立ちのよい音!ダイナミックレンジが素晴らしい!
でも、随所に彼の誠実さが見えるところは、先日のN響とのシューマンと同じ。
演奏に人柄が如実に表れる、ますます好感度大の、愛すべきオピッツおじさまでございます!
こんな懐の深いおじさま、ご近所にいないかしら・・。
ああ、それにしてもなんて厚みのある弦のユニゾン!
第2楽章。情熱的なスケルツォ!何かに追い立てられるようにスコアは進みます。
ここは、めくるめく熱いオケとピアノの競演。
ブラームスがこの楽章にこめた気持ちが、125年経った今、わたくしの胸に迫ってきます。
嗚呼、みなまで言わなくてもあなたのお気持ち、わかるわ、ヨハネスさん!
第3楽章。もう会えない、懐かしい人を思い出しているかのような、チェロの美しい調べが、なんと
時間にして3分近く続きます。「これは確かピアノコンチェルトだったのでは・・?」と不安に思う頃に、
静かに、しかし重く始まるピアノ。
嗚呼、思い出とは、かくも苦しく我が身をかき乱すのか・・と言うヨハネス。
そこに重なる、憂鬱なもの思いにまかせるクラリネット。
・・少し明るい兆しが見え、ふたたびチェロが励まします。消えゆくようなppのピアノ・・。
この余韻はどこへゆくのでしょう・・。
第4楽章。あらあら、打って変わって小躍りしそうな心。
嗚呼、ヨハネスさん、あなたは恋をしているのですね。
「そうだ、私は恋をしているのだ。」
その証拠に、時折垣間見える心の乱れを、オケが、そして更にフルートが、同じメロディを繰り返す。
この心の悶え、これぞブラームス!
ここの重厚さ、大好き。どうしてこんな和声を描けたの?ヨハネスさん。
なんだか、ここ、2番の交響曲によく似た音の形です。
そして、最後はなんとスキップしながらフィナーレを迎えるのでございました!
オピッツおじさまは、赤いお顔を更に赤くして熱演されたことでしょう。
ブラームスとオピッツ氏。お髭を生やしているところなど、妙な共通点もあって、わたくしにはこの
演奏がとてもお気に入りです。
友人のHさんはバックハウスとウィーン・フィルのものもお勧めとのこと。
こちらも興味が湧いてきますね。
次回は、1番のピアノ協奏曲について書きたいと思います。