Ｌａ　Ｖｉｅ・音楽とともに　～標高１，０００ｍの高原だより～

３月に入ってから、ＤＶＤ＆ＨＤＤレコーダーが、突然壊れてしまいました。

ＨＤＤに録画を溜めすぎて、キャパシティがいっぱいになり、レコーダーのご機嫌を損ねて

しまったことが原因と思われます。

レコーダーの表示は、「すべてのデータを削除してください」の一点張りで、「はい」「いいえ」の

選択肢も、「はい」しか受け付けないような状態になってしまいました。

いろいろ試みましたが、結果的に、やはりすべてのデータを削除せざるを得ない状況。


断腸の思いとはこのことです！

「いつかはＤＶＤに入れよう」と思ってそのままにしていた貴重で大切な映像の数々を、泣く泣く

消去しました。



その中には、ノルウェイのテレビ局が制作し、ＢＳ２で日本語訳をつけて放送された、アンスネスの

ドキュメンタリー番組もありました。

昨年、グリーグ没後１００年という節目の年に、アンスネスが精力的に取り組み、日本を始め、

多くの国でのツアーで取り上げた「ノルウェイの旋律による変奏曲形式のバラードｏｐ．２４」。

アンスネスはこの曲を、譜読みから始め、グリーグが１５歳で留学したライプチヒをはじめ、

彼の終の棲家であった、ベルゲンなどのゆかりの地も自ら訪ねて歩きました。


相次ぐ両親の死、愛娘の死、そして妻との不仲・・。

グリーグの人生で、最も悲しい出来事が続いた数年の思いを、ノルウェイの民謡を巧みに織り込み

変奏曲にまとめた、演奏時間が２０分近くもある大曲です。

グリーグ自身は、決して人前でこの曲を弾くことはなく、長い間謎の多い作品といわれてきました。

貴重な資料や足跡から、アンスネスがこの曲への理解と造詣を深めてゆくその過程を、番組は克明

かつ詳細に追っていて、見る者を惹き付けます。

電車や航空機で、次から次へと演奏会場を移動するアンスネス。いくつもの大きなトランクを

いとも軽々と引いてゆく姿は、彼を知らない人には、ピアニストという職業をまったく感じさせない

マッチョな印象さえ与えます。

しかし、忙しい移動の時間にも、彼は譜読みや、グリーグに関する書簡に目を通すことを怠りません。

アンスネスの生活の拠点はノルウェイですが、彼は、私が大好きなコペンハーゲンにも部屋を

持っています。

まあ、その部屋のセンスの良いことといったら！北欧の家具、照明器具がさりげなく使われ、

しかもそこにはピアノが２台もありました。

ひとつは装飾的要素が強い年代物のグランドピアノ、もうひとつは彼の練習用のグランドピアノ。

（ああ、いいですね！ここにおよばれしてみたい・・・。）


ひとつの作品を、じっくり時間をかけて掘り下げ、作曲家の意図を読み取り、音符と音符の間にある

作曲家の見えない思いにまで、優れた洞察力を駆使するアンスネス。

そんな彼の創り出す音楽は、行間読みの技巧に富み、それは、弾き手と聴き手の対話によって

初めて成り立つ世界です。



テレビ放送されたドキュメンタリー番組は失ってしまいましたが、幸いなことに私は、上で紹介した

ＣＤの他に、ＦＭで放送された、昨年のベルゲン音楽祭での演奏の録音も持っています。

どちらの演奏も、彼の、グリーグへの深い思いが如実に伝わってくる名演です。

今年１０月に来日予定の彼。「絶対に行かなくちゃ。」と、今から意気込んでいる私です。

（ＨＤＤレコーダーは、未だに直していないけれど・・。）




　　　　　　　　　　　　　　　　　


　　　　　　　　たぶん、このＤＶＤが、その番組と同一の内容だと思うのですが・・。

　　　　　　　　もちろん、こちらは、ノルウェイ語を話すアンスネスには
　　　　　　　　
　　　　　　　　日本語字幕ではなく、英語字幕で対応しているのよね・・。

　　　　　　　　買うべきか、買わざるべきか・・。　

　　　　　　　　う～～ん・・。