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May 31, 2008
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カテゴリ:楽しむは音

~ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調op.15への誘い~

今回第4弾で最終回を迎えますこのシリーズ。

大方の予想を裏切って(?)の、アンスネスのピアノ、ラトル指揮、バーミンガム市交響楽団盤。

「アンスネスにブラームスのコンチェルトの録音があったの!?」と、驚かれる方も多いと思いますが、

・・・あるのです。今から11年前の1997年。まだ私が、アンスネスの「ア」の字も知らない頃の録音です。

彼の弾くこの曲から受ける印象は、色で言うなら、うす~い紫色。それも桐の花のような。

この曲が初演された頃のブラームスと同じ年頃の彼。だからこそ、「青春の色」のような桐の花の色が

思い浮かぶのでしょうか。

第1楽章:ラトルは、「この曲」を「このテンポ」で始めるのがお約束のようです。

のちの2003年に録音されたツィマーマンとベル・フィル盤でも、ほぼ同じテンポで提示部を展開して

ゆくのです。

このバーミンガム響、なんとも鋭角な音のオーケストラ!う~ん、適切な表現ではないけれど、

音が尖っている感じ。。あと、弦のユニゾンがやや耳障り。トリルが揃っていないのか・・・。

さて、長い提示部が終わる頃、静かに「悩める青年の薫り」を漂わせながらソロで入るアンスネス。

ここでラトルは、完全に彼のテンポに支配されます。音楽仲間のAさんのお言葉をお借りするなら、

とてもナイーヴなピアノ!

レガートとテヌートを十分に保つことに意識を集中させているような、それはそれは流麗な

ブラームス!

157小節からの独奏部分(ヘ長調)は、とても控えめな音。このソロの後半の3声部分が

とりわけ美しく、惚れ惚れと聴き入ってしまいます。

226~255小節のオクターヴの旋律の動きの速いこと速いこと!

両手が交差する部分はキラキラとしていて、透明感のあるアンスネスらしさが際立っています。

彼は、ダブルトリルもとても正確。

ああ、そして、355小節の、第2提示部の再現部は、再び悩める青年の陰影が現れ、

なんともいえない「色気」を感じさせます。

ニ長調に変わったソロの再現部も、やはり控えめで物憂い青年の心が歌います。

私はそんな彼をぎゅっと抱きしめたくなってしまう・・。

アンスネスは「ため」がないピアニストですが、470小節第4、5音の「ド」の一箇所だけ、

8分音符でなく付点のように弾いているのは「ため」なのか、それとも「もつれ」なのか・・・。

 

第2楽章:ここは、オーケストラ、ピアノが、きわめて調和のとれている楽章。温和で友好的な

彼の人柄そのままの展開が功を奏するやりとり。オーケストラも、ひとつひとつの音の選び方が

慎重で、丁寧な演奏を心がけているのが伝わってきます。

71小節からの再現部で聴かせる4声の粒立ちの顕著さは秀逸。

 

第3楽章:アンスネス、ここは一気に弾(はじ)けたように、ハイテンポで始まります。

アクセントに特徴のあるピアノ。アンスネス独自の解釈なのか。カデンツァは、淀みなくハイテンポで

始まり、385小節から次第に遅くなってゆきます。

長いトリルとオクターヴの連続により収束へと向かう「持っていき方」は、とても説得力があり、

彼のこの曲への理解度を推し量ることができます。

全体的に、アンスネスの持つ、透明で独特の空気感が占めるこのブラームスは、あるいは、

万人向けの演奏ではないかもしれません。

けれど、偏見をかなぐり捨て、一度お聴きになってみていただきたい演奏だと思います。

こういうブラームスもあるのだ・・・と、新たな発見と世界があなたの前に現れるかもしれませんよ。

私は、機会があれば、他のオーケストラとアンスネスのこの曲を「生」で聴いてみたいですね。

<追記>:カップリングの「間奏曲op.117」の3曲が、もう~、群を抜いて秀逸!

2番なんて、その「よろめく」さまが、尋常ではなく、「人妻キラー」と呼びたくなるほどの

魔性の演奏です。

アンスネス、罪な人だわ、あなた。






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Last updated  March 2, 2010 06:30:50 PM
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