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カテゴリ:書評、感想
外山滋比古著『思考の整理学』を読了。散文、エッセー。
思考をどのように整理しまとめているか、というテーマの下、作者が実際やっている方法を紹介した内容。具体例も豊富で分かりやすい。 だいたい自分の中でも薄々は実感していたことをこのように言葉にされ、体系立てられると「なるほど」という気持ちになる。 筆者の観点は大いに勉強になったが気に掛った点をいくつかメモしておきたい。 1. アイデアはしゃべった方がいい?しゃべらない方がいい? ある項では自分の論を洗練するために、思考は人に話した方がいいと言及する。その方がより他の観点が入って複雑になると述べている。 また別の項では、他人へしゃべると否定されたときのショックは非常に重い。アイデアとはデリケートなもので、否定されたりすると立ち上がれない程の衝撃を受ける場合があり、迂闊に人にしゃべってはいけない、寝かせるべきとする。 総じて言えば、よく熟考し話をすべきである。その際には手酷い目に遭うこともある程度覚悟しておかねばならない。 2. 違った分野の学究人との会話は創造的思考を生む 筆者が「3人会」と称し、日本文学、中国文学、英文学の三人でよく話をしていた項がある。この部分を読んで修士のなつかしき「106号室」を思い出した。8人部屋を6人で使用している自習スペースだが、三者三様ならぬ六人六様があり、会話をしていて非常に楽しかった。英文学、英語音韻論、理論社会学、地域社会学(中国)、社会言語学と皆専攻が多彩で彼らの話は非常に触発があった。 またいつか集まれる機会があれば集まりたい。 3. コンピュータに対する言及 この文章が書かれたのは1981年、自分が生まれた頃。その時から、詰め込み式教育から、創造的、人間にしかできない作業の教育へと主張されている。 今、約30年ほど経過した現在にあって、詰め込み式、記憶倉庫の教育は続いている。その方が物差しにしやすいからだろう。 コンピュータは発展している。しかしながら人工知能が人間に代わるようなステージまでは進んでいない。たとえば飛行機の操縦。安定飛行にはオートパイロットが使用できるが、乱気流やエンジンの故障のような不測の事態に対しては、人間の直観的判断の方が優れている。 機械翻訳でもAという語をBに置き換える能力なら非常に優れているが、時と場合によってAという語をB又はC又はDに置き換えるとなると、今のところ機械翻訳では満足な精度が得られていない。7割から8割の正答がいいところだ。 「人工知能は人間に代わる役割を果たすようになるのか?」 これからの未来を生きる自分たちが一生付き合っていかねばならない命題かもしれない。 以上、気になった部分の覚書。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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