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カテゴリ:書評、感想
昨日の時点で読了していたが、感想は書いていなかったので、今日、書こうと思う。
気の弱い、小市民根性の権化のような主人公ゴリャートキン氏が、狂いゆく様を描いたもの。 あまりあらすじが書けない。物語は主人公の視点から描かれ、様々な出来事が起こる。 召使いへの不平と関係悪化、精神科の診察、社交界での失態、ドッペルゲンガーともいえる自分と瓜二つの人間、職場での卑小性と失敗、裏切り、恋人の我儘な駆け落ちの相談、などが展開される。 しかし、主人公がすでに精神を病んでいる設定なので、これらの事が本当に起こったのかさえ疑わしい。 客観的視点から見れば、主人公に非があるとさえ感じる部分もある。 これを読んだ時のまず率直な感想は 「ドストらしい台詞回し」 と 「『罪と罰』のマルメラードフ、『カラマーゾフ』の糸瓜のおっさん(名前が思い出せない)みたいだな」 ということ。 ざ・小市民みたいな人間。 この繰り返し描かれる共通点は何を意味しているのだろうか? 推測だが、 ドストエフスキーの命題として小説を通して、ロシアを描こうとしたというものがある。(たしか『カラマーゾフ』の解説に書いていたような…) とすると彼の描いたのは現実のロシアということになる。 だが自分は普遍性を感じる。なぜなら日本人の自分が理解する事ができるから。 精神を病んでいる人の心理を描かせたらドストの右に出るものはいない。 ロシア文学入門の講義でそういっていた。 時に忙しいときや、余裕のない時などはこの主人公とそっくりの心理に陥る事がある。 最初に勤めた会社を辞める直前の自分がまさにそんな状態だった。 辞めたことはまったく後悔していない。けれど、今振り返って思うにもっと賢いやり方もあったんじゃないかと思う。 この小説の主人公みたいに意味のない堂々めぐりを繰り返してどつぼにハマっていた。 そんな気がする。 やはり小説は楽しい。 自身に様々な視点を与えてくれる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010/03/24 07:16:56 PM
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