Maryam's HP 日記

～　結魂　～　＜続　満ち干（みちひ）呼吸（いき）＞







波は

わたしを揺らす

激しく揺らす


わたしは

波に打たれ

波を口に含む



波は舌に触れ

悦びに飛沫（ひまつ）し

波は笑い

わたしは

弄（もてあそ）ぶように

愛撫する


なされるがままに波は

ふるさとを知っているかのように

わたしの裡に






わたしは

波と戯（たわむ）れる

からかうように

優しく


波は

魚と化し

ピクリと跳ねる



波は

わたしを抱きかえし

わたしは抗（あらが）う


波は

わたしに絡めた腕を

緩めはしない



海（かい）は

快は

わたしを極みへと

抱（かか）え揚（あ）げる




波は

わたしの名と

わたしのもうひとつの名を

交互に

呪文のように繰り返す



波は

珠玉を探し求め

わたしさえ知らない

わたしを目指し

わたしさえ知らない

道を辿り

駆け回り　


わたしの身を地図とし

奥の奥まで

かき探る




わたしは

悔しいような

嬉しいような


抗（あらが）い

肯（うけが）い


抗いがたい気持ちに

気が狂わんばかりに

歌を口ずさむ

荒海に揉まれ

身は打たれ傷み

荒海はやがて

雷（いかづち）となり

曼珠沙華は火花となり

光瞬（しばた）き

音を立て

乱れ咲く




わたしは乞う


あゝ

海よ


我を月に捧げよ


我を月に捧げ


月を満たせ






すると



波と火花は

協和し

増幅し

和音となって

溢れ出づ






わたしの裡の

渦巻く潮が

和音奏でる波を吸い込み

波は本望であるかのように

恍惚と吸い込まれゆく




荒れ狂う海は

静（せい）を取り戻す





波とわたしの瞳重なり

瞳閉じ

海（かい）に

快に

沈みゆく



深い海には

漣（さざなみ）も

音もなく

ふたつが絡み合い

混ざり合い

一つに溶け

魂（たま）となって

沈みゆく




海に溶けし魂（たま）

空を仰げば

月を映し

月を映せば

月となり

月となった魂（たま）を

光照らせば

光と還る




ひとつとなって

結ばれた意思は

いつどこへでも

宇宙の果てまでも

ともに

ともに

ともに








そこでは

満たされる必要もなく

満たす必要もなく

重なった意思は

ただそれのみであり

ただそれのみでありながら

想いのままに

海を満たし

月をも満たす