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テーマ:短編を作る(405)
カテゴリ:Short stories
短編 ”小さな国” 明日という日を拒んでるなんてことは認めてないのに、この口からは幾度となくため息が漏れる。 深夜営業の店の看板がせわしく瞬く国道254号線をひとつ曲がって路地に入れば、ひとつふたつ灯りのついてたり、ついてなかったりする住宅が続く。 見上げた空に輝く星の光はあまりに他人行儀な視線でみつめるから、そんなに寒くもないのに上着の前を両手で合わせて重ねてた。 街灯の光は不十分で、ここで誰かにあたしが今襲われたって相手の顔なんてわかりゃしない。 声を微かにあげられたところで、カップルの痴話喧嘩に思い込まれて誰ひとり気にする者はないだろう。 そんな情景を浮かべてはひとつ曲がり、またひとつ角を曲がってアパートのドアの鍵を開けた。 敷居をあがる前の靴置き場の横には、ガスコンロが一つと違法に取り付けた湯沸かし器。トイレさえもドアの外の通路の向いにあるボロアパート。こんな安アパートの二階ではなく一階しか借りられない今のあたし。トイレは外で、シャワーもなく湯沸かし器しかない小さな、小さな部屋には、収納ボックス四つ横に並べてベッドがわりに。それから姿見と本棚がひとつ。 それでもここは、それでもここは、確かにあたしの小さな国。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016年03月13日 05時14分30秒
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