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犬のお巡りさん
東京では嗅ぎなれるほど漂っていたこのクスリの乾きの感じ。でもなれられるわけがない 近ずくにつれてどんどん大きく、時間とともに絶望の匂いが濃くなる 最悪の展開が何度か頭によぎった。振り解くようにスロットルを開けた シンちゃんのバイクは俺がこっちにいた時によく乗せてもらったネイキッドからアメリカンに変わっていた。アメリカンに乗るのは初めてだかすぐになれた。 妹さんの匂いに酔わないようにそんなことを考えて気をまぎらわせた 匂いの発信場所はやはり地元の中学校だった。俺もタクちゃんもシンちゃんもおそらく妹さんもかよった学校だ 残念ながら母校を懐かしむ余裕はなく、非常階段の下にバイクを止めると一気に屋上まで駆け上がった 「だれ!?」 息を切らした俺に妹さんが震えた声で言った 彼女は俺の予想通りそこにいた そして予想通りフェンスのそとにいるわけだ 「スーパーマンなら飛び降りてから助けに来るからそうじゃない俺はただの居酒屋の店員かな。」 必死で息と気持ちを落ち着かせて話しかける ドラマと違って最近の子はあっけなく飛び降りる。前の職業柄何度か経験ずみだ 「どうせお兄ちゃんに頼まれたんでしょ?いいからほっといて」 「そんなわけにはいかないよ。君が死ぬとみんな悲しむよ」 ありきたりな台詞をなげかける。自殺したいほどなにかを抱え込んでる場合こんな風に言われると反論したくなるものだ 「そんなわけないでしょ」 まずは成功だ。あとは時間をかけすぎず冷静に言葉を選択していく 「お兄ちゃんだってホントはあんたみたいなのに私を捜させてドラマ気分を楽しんでるだけ」 「親だって私のことぢゃなくて世間体ばかり心配して」 「私には一緒に生きてくれる友達も一緒に死んでくれる彼氏もいない」 「それにもう私クスリなしじゃ…」 孤独感。みんな一度は感じることだがそこにクスリがつけこんだ 「だから一人で逃げ出すのかい?」 「そうよ。もう疲れたの」 少し匂いが僕の色を受け入れ始めた 「でももし君がここで死んだら君の兄さんは君の死を背負い続けるよ? 君の兄さんは、シンちゃんは逃げたりしない。君の死を背負って一生自分を責めて生きるはずだ。そんなことは絶対にさせないよ。 君がいくら孤独をきどってツッパろうが俺たちが人間である以上生まれた瞬間誰かの子供なんだよ。誰かとかかわって存在してるんだよ。君だってわかってるんだろ?誰も愛してくれないならまず自分が死ぬほど愛してみろよ。逃げ出すのはそれからでも遅くないから。世の中そんなに悪くないで」 ゆっくり彼女に近ずき手を伸ばした 「わかってるよ。わかってるけど… どうしようもないの。」 クスリが彼女を引きずり込んでる 「ダイジョブ。生きてれば何度でもやり直せる。そのために警察や刑務所があるんだから。幸い君はそんな所にいかなくても俺たちとゆっくりやり直せばいい」 そっと彼女の手を掴む 「怖いの…不安でつぶされそうになる」 彼女を抱きしめるようにそっとフェンスを越えさせる 「大丈夫。ゆっくりでいいんだ」 彼女は震えながらしがみついた 「腹減ってるだろ?一緒においで、そんな不安ふっとんぢまうぐらいうまいもん食わしてやるよ。」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.06.04 19:32:04
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