全て
全て布団の中で大きく息を吸った。湿り気味の空気を唇が感じる。君は布団の反対側で小さな寝息をたてている。君を起こさないように静かに携帯を見た。君と過ごした最良の日はもう昨日になっていた。朝が来ることが憂鬱だ。このまま君の吐息に心をのせて夢より心地よい時に漂い続けたい。叶わぬことだと知るからこそ目を閉じ、この時を感謝して願い、飲み干した。明日になれば君は、僕の君でなく、みんなの先生になる。その瞳で僕を溶かした君は、明日には当たり障りのない笑顔で僕に微笑む。みんなはしらない。先生がこんなに愛らしく寝ることを、あんなに深く重く甘く僕の名を呼ぶことを。君が先生になるのがつらいわけじゃない。僕が好きになったのは先生だった君だから。僕の憂鬱は君がみんなの先生になってしまうから、僕が一人の生徒になってしまうから。キミのメもミミもハナもクチビルもテもココロもスベテ、全て僕のためにある僕のものならば…真っ暗な夜が僕の中も吹き抜ける。そんな僕をいつのまにか目を覚ました君がそっと包む。僕の夜に優しい月明かりがさした。僕の全ては君のもの、その為に僕は生まれて、その為に出会ったのだから