今年もベロアのブルゾンを着る季節がやってきた。
このブルゾン、実は父の形見です。これを着ている時は父がいつも私の傍にいるような思いも。
温かくて着心地がよく、着ているととても心が休まる。面白くないことがあっても我に返るひと時でもある。いつもありがとう...。
私が物心ついた頃から父が他界するまでを振りえると、父は家族の幸せだけを考えて生きていたように思う。
特に印象に残っていることは、明治生まれの父が昭和36年50歳頃、仕事上の必要性から自動車運転免許を取得したことと、他界する直前の86歳頃まで現役で無事故運転だったこと。
昭和36年頃といえばまだそんなに車が普及していない時代だったので、明治生まれの人が免許を取得するのは大変なことだったに違いない。
真冬でも毎日水風呂に入って体を鍛えながら仕事を続けてきた。風呂上がり、起床した時はいずれも体操を欠かさず、ただ家族を食べさせていくことだけを考えて精神の鍛練をしていたのだと思う。
父は母とともにモノを大事にする人だった。
父が他界してから今年で11年にもなるのに、今でも私がこれを着れるのは、品物がよく手入れが行き届いていたからだと思う。
父にとっていっちょらいだったに違いない。そんなに裕福でもなかったのに奮発して買ったのだろう。
このブルゾンを着てさっそうと歩く父の姿が目に浮かぶ。いつも思いだしてもなつかしい光景だ。