ムンクがよかった!
名古屋に用事があって行った帰りに、ふと思い立って名古屋ボストン美術館に寄った。美術展のタイトルは「ドラクロワからムンクまで~19世紀ヨーロッパ絵画の視点」。平日ですいていてよかった。出品数は44点とちょっと少なめ・・でもドラクロワから始まって、マネ、ルノワール、ゴッホ、ミレーなどそうそうたる画家たちの名前がずらり。でも今回の中で一番よかったのはムンクだなあ。「夏の夜の夢(声)」と題された絵。不思議な絵。湖のほとり、絵の中心に2つの目みたいなものが描かれている。その目が、手前にいる後ろ手を組んだ若い女性を背後から狂おしく凝視しているように感じられる。後ろに手を組んでいる女性は、ムンクにとっては罪人なのかもしれない。あるいはしがらみにとらわれ、身動きできないのかもしれない。ごく近くで見ると女性のあいまいとした表情の中で水色の瞳は縦ににじみ、涙を流しているように見える。口もわずかにゆがめている。棒のように背後の湖をまっすぐ照らす白夜の太陽。湖を渡る小さな舟に白い人影と、黒い人影がある。彼岸へと渡る、死者をのせた舟のように見える。追いつめられている。日は沈まない。それでいて夜はいつまでも明けない。かなしい目がそこにある。