新緑の奥多摩で筆を走らせる
今日は月1回習っている「走墨」の教室の初のイベント、奥多摩への日帰りバスツアーの日だった。先日テレビで広春先生のことがちらっと紹介されると全国から「習ってみたい」という反響のメールが届いたそうだ。TV東京「ソロモンの王宮」たかの友梨 編 5/15放送番組ではたかの友梨って人も思ってたよりすごかったけど、教えてる先生もすごいな~と思った。そんな先生の、畳大の作品を目の前で書き上げるパフォーマンスが見られるというので、ツアーはそれが楽しみだった。それ以外にも自分たちも新緑の中で作品作りをしたり、ゆず尽くしの懐石料理や、お茶やお花を気軽にたしなんだりという趣向らしい。いつものギャラリー兼ショップの前に20人弱が集合し、マイクロバスで一路、新緑の奥多摩へ。1時間半ほどで着くと、お昼の前に川原を散策したり写真を撮ったりした。奥多摩の緑はすがすがしく、川の流れは思いのほか早く、時折渦巻きながら、りゅうりゅうと走っている。せせらぎの音、風の音、鳥のさえずり、岩の削られた面の色、心をすくような白く美しい小石・・・気持ちのいい川原での時間。先生はそうしている間にもどのように作品にするかを常に想像しているらしく、また足元の草をとって草筆にしてもいい、と提案されたりして、遊んでいた私たちとは、やはりまったく違った自然の捉え方をしている。お昼には川辺の風流な旅館の一室でゆず懐石をいただき、その後先生の畳一畳分の大きさの作品を創作するパフォーマンスを初めて見せていただいた。山川の見える屋外のデッキに敷物を敷き、大きな紙を置く。先ほど川原で拾ってきた白い石を文鎮代わりにして四隅をとめる。そして大きな筆にたっぷりの墨をつけ、一気に作品を書き上げていく。立って中腰になり、全身で書く。呼吸、特に筆を置く瞬間は「!!」と声にならない呼吸を込めながら筆をたたきつけるように置き、力強く、なのに軽やかに筆を走らせ、数分で作品が出来上がる。手直しもできないし、考える暇もない。だから勢いがあり、なのに全体のバランスは美しい。一発勝負の緊張感と、常に想像力・造形力を鍛える鍛錬の上に成り立つ、数分間なのだろう。先生のパフォーマンスの後は、みなそれぞれ好きな文字や、景色を見て感じた文字などを半紙に書いた。私は、先生のいくつか書いた文字の中の「流」という文字があまりにかっこよかったので、それを書くことにした。半紙で練習していると、先生が書初めくらいの長さの紙を配り、ひとりひとりにお手本を書いてくださった。私の場合は、筆に手を添え、一緒に書いてくださった。初めて、立って作品を書いた。自分の力で書いているわけではないけれど先生の筆の走らせ方、力の強弱などが直接手に伝わるのでいつも手を添えていただくと、とても書き方がわかるような気がして感動する。輝かしい、なんとも自由な筆の操りが、自在にラインを生み出していく。しかし一人で書くと、その輝かしい感じはなくて頼りなくでもなんとかさっきの感覚を思い出そうとしながら無心に書くのだけれどなかなか自由に書けない。でも今回は初めて立って書いてみて、すこーしだけ、先生の書く気持ちに近づいた気がして嬉しかった。精進あるのみ。走墨の稽古のあとは、お茶室でお茶とお花を楽しんだ。作法も本を読んだくらいで、実践したことはなかったけれど、くわしい方に教わりながらお抹茶をいただくのは楽しかった。メンバーの中で、私がいちばんの若憎で、正座にはすぐ耐えられなくなってしまい、ちょっとお行儀悪かったな・・お茶もお花も日本の心を伝えるものとして、とても興味があるけど、さすがにもう手を広げられない。こんなちょっとした機会に触れることができるだけでも満足した。帰りのバスでは疲れてごうごう寝ながら帰ってきた。7月には作品の裏打ちを学び、9月には簡単ながら作品展をやる予定だという。そのころ私はどうなってるんだろう?よくわからないけど、なんとか続けてるだろう、オリジナル作品を書けるといいんだけど。教室を飛び出して、いつもより自由な雰囲気の中、より走墨の楽しさ、可能性を感じられた一日だった。