「存在の耐えられない軽さ」を一気読み!
ミラン・クンデラとかチェコのこととか、ぜんぜん知らないけど映画のタイトルとして「存在の耐えられない軽さ」は知っていたしシュールなエロティックな映画なのだろう、と想像していた。少し前にM.Saitoさんがおすすめしてたと思うんだけど(違ってたらゴメンナサイ!)とても興味がわいたので、ミラン・クンデラ 「存在の耐えられない軽さ」を買ってきて一気に読んだ。最初は入りにくく、読みにくく感じて進みが遅かったけど、だんだん面白く興味深くなってきて、夜を徹して朝までに読み続けてしまった。哲学的恋愛小説、とある。確かに表面の事柄だけでも、劇的に緊張感があり恋愛小説としてじゅうぶん面白いし(たぶんにエロティックだけど)チェコの歴史的背景に翻弄される3人の男女、さらにその親や愛人などの人生も描かれ、興味深いがそれだけにとどまらないところが、いい。重さと軽さ、自己と他者、体と心、愛と性、言葉と理解、などがニーチェから始まりパルメニデス、ベートーベン、フロイト、カフカなど哲学や芸術によるエッセンスをからめて、さまざまに考察されている。細かく読み返したり、考えたり、言葉を咀嚼したり共感したりしながらじっくり読み進めていき、ときどき「はあ~そうかぁ~」などとため息つきながらのめりこんでしまっている自分がいる。恋愛だから、とか政治的に厳しい不安定な時代だから、とかは表面的なことであって常にその向こう側を見つめて描かれているのが印象的だ。つまり1回の生を生きて、自身を見つめ、考え、行動し、周囲と関係している、そのことに常に焦点が当てられている。そして小説としては珍しく、言葉や思考や感覚の違いを分析して列挙したりしている。時間軸もさまざまに行き来し、複数の登場人物の視点からもう一度同じ時期のことが語られたりして、物語の筋そのものが問題ではないということがわかる。語り手の思考・分析が全体を覆っていて、物語に酔うような話ではないのである。この点、映画ではきっと時間軸が一方向だろうと思うし分析の部分などは描きにくいと思うので、そういった特長がだいぶそがれているのではないかと想像する。(その分、物語としては美しく緊張感あふれ面白くなっているかも)3人の男女の中では、主人公の男の妻の苦しみもひどく迫ってくるものがあるが男の愛人で、「裏切りは前進だ」と考える、画家の女が一番魅力的だった。味わい深い一冊である。しかし、すぐ全部を読み返すには、重い一冊である。私の中に沈殿した何かが浮かび上がってきて無性にこれを欲するときまでは、しばらく放置されるであろう・・・「存在の耐えられない軽さ」DVD版「存在の耐えられない軽さ」映像になってしまうとかなり違ってくるのでは、と思うけどでも、ジュリエット・ビノシュ(妻?)とレナ・オリン(画家?)かあ・・豪華だ。映像なりに面白いかもしれない、今度見てみよう。