プリンスアイスワールド2007東京公演
8月23日、プリンスアイスワールド2007東京公演を見に行った。フィギュアスケートのショーを生で見るのは初めて。いいお天気。ダイドードリンコアイスアリーナ。開演前の会場。わくわくどきどき。第1部はいきなり荒川静香さんと本田武史さんのペアが登場。「ウェスト・サイド・ストーリー」をモチーフにバレエで言ったらグラン・パ・ド・ドゥ的な構成で。プリンスアイスワールドチームを率いる八木沼純子さんは、キュートで、華があった。選手を引退してだいぶ経つけれど、なぜかとてもフレッシュな感じを受ける。ほっそり引き締まった身体で、ずっとずっと鍛え続けているのを感じた。第1部で印象的だったのは、ロシアのエレナ・レオーノワ&アンドレ・コワルコ ペア。氷上すれすれにエレナ・レオーノワが宙を振り回されるアクロバティックな演技には、はらはらどきどき、思わず「すごい~~っ!!」と歓声をあげてしまう。1部のラストを飾ったのは、長野オリンピックの金メダリスト、イリア・クーリック。Jazz曲にのって、素晴らしい演技を見せてくれた。彼はダンサーとしても最高で、目を見張った。柔らかさ、しなやかさ。技とつなぎとの区別がなく、それでいて強弱のコントラストが見事。全ての動きがスムーズにつながっており、まったく力みを感じさせない。作為を感じさせないほんの短い助走で、いきなり高いジャンプを見せる。スケートなのにスケートの枠を感じさせない。Jazzのフィーリングを的確にとらえ、スモーキーな空気を表現している。身体が音楽と化している。こんなスケーターは初めて見た。これだけでも行った価値があると思えたほどだ。20分の休憩では、あたたかい飲み物や食べ物を買って暖を取る。場内はけっこう寒かった。第2部では楽しみにしていた高橋大輔さんがやっと登場!高橋大輔さんは、遅ればせながらこの間の世界選手権のエキシビション「ロクサーヌ」で初めて見て、びっくりした。あの若さで日本人の男子とは思えない色気としなやかさを持っている。そして自信と野望のようなものも。1曲ですっかり惹き付けられてしまった。今回は、根源的なエナジーを感じさせるようなビョークの曲にのって黒の衣装で、情熱的に踊った。ロクサーヌにしても、この曲にしても、曲の好みからして、なんだか勝手に同じ血を感じてざわざわする。明るくない"情熱"の風合いがとても私好みだ。高いジャンプ!なめらかな着地。スピンのときは黒い炎が燃え上がるようだ。素晴らしかった。今後さらに、いったいどんな表現者になっていくのか、楽しみだ。最後にソロを踊った荒川静香さんは、とにかく美しくうっとり見てしまった。プロとしてのストイックさと、気品がある。羽が生えているかのような衣装に、手に青いうす布を持ち、たなびかせて氷上をすべる。洗練された美しさと軽やかさ。ある種の哀しささえ感じさせる。以前、テレビの解説者が荒川さんの演技を「見ているだけでなぜか涙が出てくる、心の琴線に触れる」というような表現をしたように覚えている。確かにテレビ画面でも、ただただ息をつめて彼女の生み出すラインを見つめ続けているだけで、涙が出てくる。それは彼女が美しさの絶頂を体現することで、この生きている一瞬一瞬が確かに移ろっていく、終わっていくことを無意識の部分に刻みつけていくからかもしれない。そしてまた、彼女の滑走とともに、見ている者の心も氷上を滑っていき、感覚的に、根源的な自由を感じさせてくれるのだろう。この美しさをずっと見ていたい。この一瞬を惜しむ。この一瞬に拍手を送る。言葉はいらない。言葉を超えて、彼女のスケーティングは絶対的な輝きを放つ。世界一流のスケーターの表現を間近で見て感じて、とてもとてもぜいたくないい時間を過ごして幸せだった。