ティツィアーノ「うさぎの聖母」@ルーヴル-DNPミュージアムラボ
1月19日、ルーヴル-DNPミュージアムラボに初めて行ってきました。かのルーヴル美術館と大日本印刷(DNP)による共同プロジェクトによりルーヴルの作品を、1点ずつだけれどじっくり見たり理解を深めたりできる企画で、チケットはなんと無料!こんな美術展があるなんて知らなかった!完全予約制で、私はこのラボのことを知った昨年12月に予約しておきました。無料で人数限定(1枠20人まで)で、ティツィアーノの作品を静かにゆっくり見れるなんて、嬉しい企画♪目黒と五反田の間くらいにありますが、私は目黒から歩いてみました。大日本印刷(DNP)のビルの1階に、ルーヴル-DNPミュージアムラボが入っています。今回はルーヴル-DNPミュージアムラボ第3回展として、「うさぎの聖母 聖なる詩情」が開催されています。16世紀の巨匠ティツィアーノの「聖母子と聖カテリナと羊飼い」通称「うさぎの聖母」は、ルーヴル美術館で、作品が移動していたり、他の展覧会に貸し出しされたりしてあるべきところに作品がないとよくクレームがくる作品の、ベスト5に入る人気の作品だそう。展示室で、作品を前にまず非常によい状態であることに驚く。明るくみずみずしい色彩!ティツィアーノらしい丸顔の親しみやすい聖母の顔。青いローブと紅のドレスとウサギの白さが際立って美しい。幼子イエスの愛らしいぷくぷくした手足。カテリナの顎に手を置くしぐさが、赤ちゃんらしい。無邪気な表情。後光がきらきらしている。そしてカテリナの繊細かつ洗練された衣装や髪型、横顔の美しさ。ひだをたっぷりとったドレスはやわらかな乳白色。鮮やかで清楚な水色の薄手のストールには金糸のもようが入っており、端には金の房が下がっていてとてもおしゃれ。こんなストールが欲しくなる。白い布にくるむようにイエスを抱く、優しいしっとりしたしぐさも心地よい。たそがれの空と野山の遠景の美しさ。緑から青へのグラデーション。明るく穏やか。色彩の音楽のようだ。さて、じかに作品鑑賞するだけでなく、ここにはさまざまな試みがあり、体験することによって、よりこの作品や当時の時代背景を学ぶことができます。展示室の向かいの空間にはさまざまなブースがあり、その場所に入ったり、通りがかったりすると、チケットについているICチップが反応して、自動的にひとりひとりが身に着けている音声ガイドが始まったり、ブースのほうでも作品解説の映像が始まったりして最初はびっくりします。映像に歩み寄って絵の世界の中に入っていく装置などはもっと改良して欲しいところだけど、一瞬この絵の野原の上を飛んでいるような錯覚を覚えたりしてとても斬新な体験ができます。眼球の動きから視線をコンピュータが読み取り、自分が「うさぎの聖母」のどこをどんな流れで見ていたかがわかる装置が面白かった!帰りにプリントアウトして手渡してくれたのが、これ↓。直線は視線の移動をあらわし、円の大きさは見ていた時間に比例しています。私の場合、カテリナとマリアに視線が多く集まっているのがわかります。まずカテリナ、それからマリア、そして背景、羊飼い、うさぎと移り、幼子イエス、再度マリア、足元のかご、さらにもう一度カテリナ、と視線がうつっています。シアターはちょっと奥まっているけれど、必見。この絵の修復作業から絵画制作の過程など、新たに判明したことなどを紹介していて、とても興味深かったです。土曜日の午後はいっぱいだったのでお昼の時間帯を予約しましたが、5人くらいしかいなくて、「うさぎの聖母」展示室を独り占めして鑑賞したり(ルーヴルではありえない!!)快適にブースを利用したりすることができました。1枠最大20人までだけど、20人もいたらブースの利用もだいぶ制限されるだろうなあ。5人くらいの利用でも時間が足りない、と感じたくらいだから。(1時間の時間制限があったので、すべてのブースは体験できなかった・・)ブースの囲いの壁や椅子などが紙、ダンボールでできていることに気づき、こんなところに印刷屋さんらしさをさりげなくアピールしてるんだなあと面白く感じました。会期は3月1日までです。まだ予約は空いている日も多いので、ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか?