永井雅人さんの公開アトリエ展
永井雅人さんの公開アトリエ展を見に、恵比寿へ行きました。永井さんは昨年から今年にかけてオーストラリアのメルボルンやN.Y.に滞在して制作されていて、今回は帰国されてから初めての個展でした。最終日になってしまいましたが、何とか仕事帰りに駆けつけました。でも時間ぎりぎりだったのであわてていて、間違えて隣のマンションのエントランスに入りこんでしまい、セキュリティのため開かない中扉の前でうろうろした挙句、ケータイに電話して迎えに来ていただくという大迷惑な客。(本当にすみませんでした・・・)アトリエまで案内していただき、新しい作品の数々を見させていただきました。メルボルンで制作された「グレートオーシャンロード」の連作、大らかさ、伸びやかさが加わったような感じ。以前は見られなかったチューブのような太いラインが印象的だった。N.Y.で制作したという作品の画像も見せていただいたが、それにもやはりチューブのような水色のラインが全面を覆っていて、弾力性のようなものを感じさせる画面だった。モノクロの大きな銅版画「海の・・」「大地の・・」(タイトルを失念してしまった(^^;))などは永井さんの真骨頂で、やはり見ていて飽きない。繊細にからみつく白と黒の世界。静謐でありながら、やわらかい生命力がわきかえっている。どこまでもどこまでも続く何ものか。「大地の・・」のほうは、抽象的な表現であるにも関わらず、まるで動物があちこちに隠れていてこちらを覗いているような視線や息遣いを感じてしまった。モノクロのひんやりした印象の銅版画なのに、このやわらかいしなやかな感触は何だろう。「海の・・」の植物的な、なんとも言えない翳りの部分などは本当に美しい。ため息がでる。なびす画廊で見た作品でも、やはりこんな植物のシルエットのようなモチーフがあり、そのちょっと淋しくあたたかく乾いた感触が、私には非常に魅力的にうつる。心に焼き付けられる。3年前、学生時代に描いたというカラー作品も小品ながらとても美しかった。森の中、小道の向こうに光の空間が広がっているかのような、そんな背景に味わい深い肌合いの赤や緑や黄の色が浮遊し、時に交わり、している。抒情的で、心がその空間の奥へと運ばれるような作品だった。コーヒーやお茶をいただいたりしながら、メルボルンとN.Y.はどちらのほうが好きかとかどれくらい制作時間はかかるのかとか、色を使うときは、何かこだわりがあるのかとか不躾な素人の質問に、永井さんは淡々と答えて下さいました。グレートオーシャンロードの奇岩の1つが崩れ始めているという話や、N.Y.のハーレムの話なども興味深く聞きました。それにしても、こんな大きな作品に非常に緻密な表現をする永井さんの感性や頭の中はいったいどうなっているのだろう?絶対的に感覚的であり、と同時に案外文学的のようでもあり、とても不思議だ。また次の作品展を楽しみにしつつ、アトリエを後にしました。終了時間を30分も延長させてしまって申し訳なかったな・・。短い時間だったけど、興味深い楽しい時間でした。永井さんに感謝です♪追記:永井さんは9月現在、オーストリアのグラーツにて制作に入られました。「よかったらお使いください」と写真データを送って下さったのでお言葉に甘えてアトリエ展の写真をアップさせていただきます♪