ホタルを見に行った
ホタルを見に行った。田舎育ちの割りには、これまでホタルを直に見たことがなかった。天然のホタルが発生する自然公園の近くの宿を取り、温泉旅行をかねて見に行くことにした。夜7時半の開園とともに、他の観光客に混じってぞろぞろと山道を歩く。灯りを落とした暗い川べり、木の陰に光を見たときの驚きと喜び。思わず歓声をあげてしまう。TVの画像などでしか見たことがなかったので特殊カメラで撮影されたぼーっとした淡い光の印象があったが、実物はまったく違った。星と同じようにきりっと、凛とした白い光で、長く光り続けたり点滅したり、ときにすばやく飛んだり。そして意外にも木の高いところにもたくさん飛んだりとまったりしていた。低い草むらだけを行き交うものだと思い込んでいたけれど、そのイメージを覆された。木々の辺りに明滅しているのを見ると、まるで真夏のクリスマスツリーのようだ。わずかに黄緑がかった強い光。呼吸するように明滅する白い光。生きてる光、だった。生き物が光を発するなんてそれだけでも不思議だけれど。川のざーざーという流音に人の声はかき消されているのだろうか、ホタルはいくつもいくつも優雅に飛び交い、私たちの頭上を超え、闇から姿をあらわしては消す。