カテゴリ:アート
名古屋市美術館「ピカソとクレーの生きた時代展」を鑑賞後、 懐かしい常設展を見た。 エコール・ド・パリ、現代美術、メキシコ絵画、日本の近代美術などの コレクションがあり、白い開放的な空間が心地いい。 アンゼルム・キーファー「シベリアの王女」 雪の積もった駅と線路の風景画なのだが、ひと目見てびっくりする。 幅5mを超える大作ということだけでなく、圧倒的な吸引力のある作品。 北の地の荒涼とした空気。 鉄の冷たさ、硬質さが見る者をはねつけ、同時に レールの果ての消失点へと引き込んでしまう。 画面は大きくゆがみ、凸凹し、さまざまな素材が塗りこまれ、 右端には古ぼけた本物のバレエシューズがぶら下がったりしている。 急速なほどの遠近感。 まるで高層ビルから下をのぞきこんだときのようなめまい感と、 ふらっと身を投げてしまいそうになるあやうさ。 突然目の前にひらけている世界のあまりの殺風景さ、殺伐とした情景、 それらが何かしら心を駆り立て、スピード感さえ感じさせる。 フリーダ・カーロ「死の仮面を被った少女」 この美術館に来ると必ずじっくり見る作品のひとつ。 日本国内で見ることのできる唯一のフリーダ・カーロの作品だと思う。 ポストカードほどの小さな作品だが、なんとも不思議な雰囲気が漂う。 明るい空と草原の背景、花をもった健康そうなあどけない少女の身体。 そして不吉そうなあらわな白い死の仮面。 虎の仮面も魔よけというより、奇妙なおどろおどろしさを感じさせる。 フリーダ・カーロと言えば自画像だが、自画像ではない作品は珍しいのではないだろうか。 流産した子供の絵らしいので、ある意味自分の分身と言えるけれど。 ルフィーノ・タマヨ「夜の踊り子たち」 画面全体を覆う闇の濃紺、瑠璃色が非常に美しい。 その中で黒い肌をさらして踊る、踊り子たちのあやしさ、そしてそこはかとない哀しさ。 手だけがヒトデのように赤く、まるで内面の情念の炎があらわれ出ているようだ。 命の踊り。 荻須高徳「アムステルダムの運河」 オギスと言えば"パリ!"というイメージだが、 水の都のせいか、パリより壁の色が明るく、心持ちダイナミックな色づかい。 水のゆらぎの表現など、思わず心躍る。 アムステルダム、行ったことない。行きたくなる。 荻須高徳「ボールガール通り」「洗濯場」 懐かしいパリの雰囲気。陰鬱なグレーの空。かたく突き放すような硬質な建物。 しがしがとした、味わいのあるマチエール。石の街。 久しぶりに荻須高徳を見たが、やっぱりいいなあ! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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