カテゴリ:アート
ほどよい竹の筒に走墨の筆を立てている。 太い筆、細い筆、猫の毛の柔らかい小筆、下ろしたばかりの中筆、 先生から頂いた筆、姉から譲り受けた古い筆・・etc. それをじっと見ていると、浜松の祖父の部屋を思い出す。 祖父と父を思い出す。 書と絵を教えていた祖父も、こんなふうに いや、もっと夥しい数の筆を文机の上に立てていた。 常に硯は出しっぱなしで、色紙や作品用の扇子などが無造作に置いてあった。 壁一面の棚には書や絵画の本がびっしりつまっていた。 父は書はやらなかった(と思う)。 工場勤めの傍ら、デザインや写真や8ミリをよくやっていたので、 色見本やポスターカラー、カメラや8ミリの機材、現像の道具などが実家にはあった。 描くことや創ることが日常に染み付いていた。 自分が絵の人ではない、グラフィカルな人間ではない、と コンプレックスも交えて常々思ってきたけれど、 こうして増えてきた筆を竹筒に立ててぼーっと眺めていると どんどん自分が祖父の、父の、まごうことなく血をひいて 同じ道を辿ろうとしている、その引力に逆らえないのを感じる。 決して自らひどく意志して突き進んでいるつもりはなく、 もっと意志して突き進めるのであれば、 シンプルで、一致していていいのになあ、 こんなにもやもやしなくて済むのになあ、と半分残念に感じながら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.09.13 10:25:45
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