姥ざかり花の旅笠 1 田辺聖子
これはフィクションではない。Y図書館では随筆などに分類され、しかも作品名でソートされているから、探し出すのは容易ではない。実は今回は行き当たりで手に触ったのがこの本だった。岸本水府や杉田久女の評伝も同じ分類であるが、これは既読である。6月以降さがしていた本に出会えて幸運であった。 江戸末期、福岡県の中間宿の豪商小松屋女房小田宅子の伊勢参宮から日光参詣の旅のノンフィクションがはなしの筋である。江戸末期などというとアフガニスタンなみに考える人も多いが、世の中も大分緩んでパスポートなしの旅なんぞが普通だったらしい。宅子さんは歌人である。いわゆる歌枕をたずねるという興味もある。一行4人に供3人である。中間から芦屋に出て赤間関から瀬戸内海横断の船にのろうとするが、風雨に邪魔され陸行せざるをえない。途中省略して大阪につく。振る舞いをみると、まったく豪商夫人である。大阪を出るまで約40日、今なら新幹線で2時間である。まだまだ旅は続く。