『ファースト・レディ』
彼女は強引な人だった。最近の女の子というのは、こうも積極的なものなのだろうか。出会って間も立たない。それなのに「おいでおいで」と言う。もちろん歳上の私にだからそこは敬語なのだが、猫なで声で言われるとそう聞こえてしまうから不思議だ。そして不承ながらまんざらでもない私がいる。今日はやめとこうかと思ったが、車でもうそこまでやってきているし、あえて無視するのも大人げないと自分に言い訳をして、私は流れに身を任すことにした。彼女の前で私は車を停車させ、パワーウインドーのボタンを押す。そして彼女はいつもの様に笑顔でそして艶っぽい声でこう言った。 「ありがとうございます。ハンバーガーおひとつで、百二十円になります」