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テーマ:詩(901)
カテゴリ:詩
月
一 僕が、もう二十年近く見上げては、様々な想いを抱かせた、あの、地球の衛星は何だったのだろう。 今、月を目にしてそう思う。 二 果たして街には、月が無かった。 二週に一辺姿を消す光る物はあったが、しかしそれは月ではなかった。 ああ、あすこは月を頭に頂くには空気が汚すぎる。 街を漂う人々。 力なく、漂う。 そして僕は、街で月を見ることを諦めた。 三 ここに来て二ヶ月。 身の周りのことで、他のことを考える余裕が全然なかった。 彼女とはあんな形で別れて、そして、今。 ああ、僕は他人とあうべきではない。 会う人すべてに問題を持つ。 生まれて来なきゃ良かった、などと月並みなことは思わない。 ただ、誰か肩を押してくれる人が、 今の状況から抜け出して、楽にしてくれる人が欲しいだけなのに、 そんな人たちとも問題を避けることができない。 四 ある夜、いつものようにゴミを出しに外に出た。 冷たい空気が頬にひんやりと快い。 ふと、自分の影を見る。 ついに街灯に火が入ったか、と思う。 月だ。 なんということだ。 この街に月があったとは。 今まで気がつかなかったなんて、僕は、なんという大莫迦だ。 影。 名声も、人気も、いらない。 欲しいのは、昼も夜も僕を存在させてくれる影だけだ。 五 家に戻って、彼女に手紙でも書くか、と思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006/04/19 05:37:44 AM
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