『小川未明童話集』小川未明
その軍隊はきわめて静しゅくで、声一つ立てません。やがて、老人の前を通るときに、青年は、もく礼をして、ばらの花をかいだのでありました。●『小川未明童話集』●小川未明(おがわみめい)●新潮文庫●読了日:1,2年前初めて小川未明の作品を読んだのは小学校3,4年生の頃、国語の教科書に『野ばら』が載っていました。ふたつの国の境に警備に立つ小さな国の青年兵士と大きな国の老兵士の心の交流、ふたつの国の思わぬ戦争の勃発、戦場へ赴く青年に向かって老兵士は「私の首を持っていけば手柄になるから」と勧めるのですが、青年は「争っているのは国です、私とあなたは友人ですからそんなことはできません」といい、去っていきます。ある日、通りがかった旅人に戦争の事をたずねると、小さな国が負けてその国の兵士は皆殺しになったと答えが返ってきます。老兵士は石に腰掛けて青年のことを想っているとうとうとといつか夢を見始めました。老兵士は夢に青年の立派な姿を見ます。馬にまたがって静かに隊列をなしてきた青年は老兵士に目礼をすると野ばらの香りをかいだのです。老兵士が何か言おうとすると、目がさめました。ひと月のち、野ばらもかれて、老兵士も故郷へ帰っていくのでした。とこういう短い短編ですが、小学生の時何度も読み返したものです。日本語がとにかく美しいのです。他に『月とあざらし』も切ない可愛いお話です。昔の童話は本当にきれいです。