マックス爺のエッセイ風日記

≪　映画編　≫


　清須会議


　１１月に観た映画『清須会議』は三谷幸喜の小説を、彼自身が脚本化し監督したもの。信長亡き後の天下を、秀吉（大泉洋）と柴田勝家（役所広司）が争う姿をパロディ風に描く。ここでは人を食った明るい秀吉が描かれていた。


　利休にたずねよ


　一方先日観た『利休にたずねよ』には、晩年の秀吉が登場する。ここでは天下人の奢りから、千利休（市川海老蔵）を死に追いやる陰湿な姿が描かれる。こちらは直木賞作家山本兼一の小説が原作。妻（中谷美紀）が夫利休の本心を知ろうとする姿が哀れ。先日亡くなった市川団十郎も出ており、最後に親子での共演が出来て本望だったのではないか。大谷直子の老いた容貌に驚いた。モントリオール世界映画祭で最優秀芸術貢献賞受賞作品。以下、今年観た映画を列挙する。





　『渾身』は島根県隠岐島に伝わる伝統古典相撲の姿を描く。『東京物語』はかつての名作のリメイク。瀬戸内海の小島から上京した老夫婦が、都会で暮らす子供達の生活ぶりを垣間見る話。ほのぼのとした人間味が伝わる映画だった。『ライフオブパイ』は洋画。船で動物を移動中、嵐に遭い、逃げ出した猛獣と漂流する不思議な話。驚くような場面が多かった。（以上１月）





　『きいろのゾウ』は心を病んだ３組の夫婦の話。中でも向井理と宮崎葵が演じる夫婦が哀しい。（２月）『草原の椅子』は宮本輝の小説を映画化したもの。身寄りのない子供を育てる過程で、男女が結ばれる話。男同士の友情にも泣けた。『フライト』は洋画。アル中で薬物中毒気味の機長が、最適の判断と操縦で乗客を危機から救う話。（以上３月）





　『君と歩く世界』は洋画。シャチの訓練中に脚を失った若い娘と、子持ち格闘家が出会って共に暮らすまでの話。『ひまわりと子犬の７日間』は、動物センターに保護された子犬が刹処分される１週間の期限までに助け出す話。『ジャックと天空の巨人』は洋画。童話「ジャックと豆の木」の翻案だが、実像とアニメを巧みに合成して不思議な世界を創り出した。





　『舟を編む』は辞書作りを手掛ける小さな出版社の話。丹念に語彙を集め、実際の用例を確認する地味な作業を描く。『リンカーン』はアメリカの大統領、アブラハム・リンカーンの実像を追う。黒人奴隷の解放を求める南北戦争の実態や、父親、夫としてのリンカーンの苦悩が描かれる。（以上４月）





　『県庁おもてなし課』は、高知県の観光担当部署に配属された男の活躍ぶりを描く。高知県の観光名所をたくさん楽しめた。（５月）『はじまりの道』は松竹映画の創立何十周年かを記念するもので、松山恵三監督の功績を讃える趣旨があったようだが、見どころは乏しい。『奇跡のリンゴ』は体の弱い妻のために、無農薬で有機栽培のリンゴ作りを目指す男の話。相手を思いやる夫婦愛に泣けた。（以上６月）





　『風たちぬ』はアニメで、宮崎駿が監督する最後の作品。堀辰雄の同名の小説とは異なり、国産の飛行機を開発する男と戦争に向かう当時の日本の姿を描く。『終戦のエンペラー』は日米合同制作作品で、昭和天皇に戦争責任があったかどうかを裁く話。終戦当時の日本人と、戦勝国の軍人との息詰まる駆け引きが描かれる。（以上７月）





　『少年Ｈ』は妹尾河童原作の同名の小説を映画化したもの。戦時中から終戦直後の日本の、ある家庭に起こった実際の話。キリスト教を信じる一家が迫害に遭いながらも愛情に包まれた生活を送る感動的なストーリー。『そして父になる』は、「赤ちゃん取り替え事件」によって人生を狂わされた２つの家庭の親子の話。親子、特に父と子の関係について考えさせられる作品。（以上９月）

　以上、この１年で２０作品を鑑賞したが、１本千円で良い映画を観られるのはあり難い。来年も素晴らしい作品に出会いたいものだ。


　写真の花々は、１０月に旅した長野県蓼科高原バラクラ・イングリッシュガーデンで撮影したものです。＜続く＞