テーマ:暮らしを楽しむ(387573)
カテゴリ:生活雑記
じ≪ どんと祭編 2 ≫
どんと祭編の第1回目のブログに対し、さまざまな書き込みがありました。それぞれお住まいの地の模様を書かれていたのを紹介しますね。仙台では「どんと祭」(どんとさい)と呼びますが、三重のよっちゃんさんと徳島のすずめのじゅんじゅんさんの所では「どんど焼き」。京都のお散歩うさぎさん、愛知のマッカーサーさんの所での呼称は「左義長」(さぎちょう)でした。 愛知の山間部では14日ではなく15日に行い、畑に青竹とわらを積んで火をつけるとのことです。雪国(新潟?)の灯里さんの所では三角形に積んだわらの上に、家庭から持ち寄った松飾りや書き初めなどを積んで燃やし、その火で餅やするめを焼いて食べるとのことです。そして大阪のHuちゃんさんの所では「とんど」と呼んでいるとのことでした。皆さん、どうもありがとうございます。 さて、人類にとって火はどんな存在だったのでしょうね。火を手にしたことによって、先ず獰猛な野獣の攻撃を避けることが出来ました。そして寒い冬でも、暖を取ることが出来ました。暗い夜も、火が燃えると周囲が明るく見えます。そして食べ物を調理することによって、それまでとは比較にならないほど栄養が摂れ、人類の繁栄につながったのではないでしょうか。 戦後しばらくの間、「マツダランプ」と言う電球がありました。これは松田と言う電球メーカーが作ったものではありません。ゾロアスター教の神、アフラ・マツダの名から採ったのです。ゾロアスター教は拝火教とも呼ばれ、ニーチェの著書「ツァラスツラはかく語りき」のツァラスツラとゾロアスターは同一。アフラ・マツダは光の神のようです。 翻って我が国の場合はどうでしょう。イザナギの妻イザナミは火の神「カグツチ」を産んだ際、ホト(陰部)に大やけどをしたのが原因で、黄泉の国(よみのくに:あの世)へと旅立ちます。また古代の英雄日本武尊(ヤマトタケルノミコト)は、東征の途中、野原で火攻めに遭い苦戦します。その際草薙の剣で草を切って火をつけ、逆に敵を焼き殺します。これが焼津の地名の起こりとされています。いずれも神話ですが、これは一体何を象徴しているのでしょうか。 阿蘇神社(熊本)、大物忌神社(山形)の祭神は火の神。阿蘇神社が祀るのは阿蘇山で、大物忌神社は鳥海山です。共に古来から日本有数の火山でした。伊豆大島三原山の噴火は「御神火」と呼ばれています。火祭りで有名なのは鞍馬山(京都)や秋葉山(静岡)です。前者は由岐神社の、後者は秋葉神社の祭礼です。 仏教でも密教では護摩の火を焚き、東大寺二月堂のお水とり(修二会)では、大きな松明(たいまつ)に火をつけます。また修験道(山伏)の世界では、火渡りの神事を執り行います。それらは全て、火が神聖なものであることの証。言い換えれば人間にとって、火は欠かせない存在だったのでしょう。 どんと祭編第1回の時、私は「歳神様は火と共に天に還る」と書きました。本当はお正月の神である歳神様は山から里へ現れ、お正月が終わると再び山へと帰ることを知っています。だが、敢えて天へ還ると書いたのは、アイヌの祭を頭の中で思い浮かべていたためです。 アイヌの神は来訪神。例えば熊の形になって人間の前に現れ、自ら尊い食料になります。アイヌはその魂を天に「送る」ことによって、再来、再訪を願います。この「送り」の思想が、石川県能登半島の縄文遺跡である真脇遺跡のイルカ送りとそっくりなのです。真脇では数千年間イルカの追い込み漁をやっていました。 ここから大量のイルカの骨や縄文土器と共に、イルカの脂を燃やすためのランプや、トーテムポールのような栗の丸太が出土しています。イルカの魂を天に送る行事をすることで、イルカの群れがいつも来てくれることを願ったのです。アイヌの神事イヨマンテでは、火を焚いて祈りました。日本人の先祖である縄文人も、囲炉裏の火を燃やし、子孫の繁栄を祈ったことでしょう。 御社殿(本殿)での参拝を終えた裸参りの男達が、どんとの火の周囲を廻ります。冷え切った体が、聖なる火で温められます。男達は火の周囲を廻りながら、この一年間の無病息災と家内安全を祈っているのでしょうか。 火を自由に扱えるのは人間だけ。そして火は人類に多くの恵みをもたらしました。次々に訪れる参詣客が持ち寄る松飾りによって、どんとの火は夜遅くまで燃え続けます。火の暖かさが、訪れる人の心まで暖かくしてくれるようです。昔はこの火で、餅を焼いて食べたりしてたのでしょうね。 そろそろどんとの火ともお別れです。 どんどん燃えろ、どんとの火。燃えて、人々の平和への願いが天まで届きますように~♪ 次第に遠ざかるどんとの火。さようなら、さようなら。そして、ありがとう、ありがとう。来年もまたここに来れると良いね。 明日は「裸参り編」の2回目です。どうぞお楽しみに~<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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