テーマ:詩(904)
カテゴリ:詩
旅へ ハイビスカスの花蔭から覗いた少年の眸が いきなり わたしのこころに飛び込んできた その時 眉根の奥底に 一瞬の翳りを見た と思ったのだが 案外君は うりずん南風の中で 鈍色に光る波涛のざわめきを 確かめようとしていただけかも知れない 怖れ 恥じらい 後ずさり 回帰の旅の初めに出会った沖縄の魂は 華やぐ彩とはうらはらに 傷つき易い琉球玻璃 この緑したたる南の島で 何時の日か喪失った父母を 故郷を そして わたしの元素記号を 果たして 探し当てることができるだろうか ユタとイタコ うりずんとオリジン 濃い酒と血のぬくもり そんな舌先三寸の修辞学では サンマがグルクンを モミの樹がガジュマルを苛むような気もするが そのうちモミにも気根が生え 支柱根にもなるだろう 少年よ やがて大人になった時 さあたああんだーぎいの ほのかな甘さとともに 昔 清明祭のころ 北からの旅人を一人 見かけたことを 思い出してはくれないか 1989.4.8. 第一詩集 『南島風景』 沖縄に赴任してわずか8日目で、私はなんと25年ぶりに詩を書けたのです。それだけ強烈な印象を抱いたのでしょう。それに幾つかの衝撃も重なって生まれたのがこの詩です。ともかくこれが沖縄で最初の記念すべき作品でした。<続く> ソチオリンピック男子ジャンプラージヒルで、葛西選手が見事銀メダルを獲得しました。41歳での栄冠に、心からの拍手を送ります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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