テーマ:詩(904)
カテゴリ:詩
六月のバス 六月のバスは 汗ばんだ風の匂いで溢れている 六月のバスは 素早く席を見つける 外国人教師の薄くなった金髪頭 や 座りたいくせに立っている 通学児童のランドセル や 毎日 乗客の姿をスケッチしている 事務職員の画帖 や ヒップラインもあらわな 女子学生のタイトスカート を 乗せながら 郊外の大学に向かって走って行く それでも 六月のバスは 窓ガラスに触れそうなモクマオウの葉蔭から もう 夏が近づいていることを予感している そして 六月のバスは サトウキビ畑の中を 突然 中城湾に墜ちて行く 1989.6.16 第一詩集『南島風景』から 私の職場は郊外にあり、通勤にはバスを使っていた。この詩はその通勤風景を描いたもの。6月の沖縄はむせかえるような暑さで湿度も相当に高く、ここが亜熱帯の島であることを思わざるを得ない。バスから見える風景も内地から来た者にとってはすべて珍しく、異国情緒豊かなもの。 南北に細長い沖縄本島の真ん中を、まるで背骨のような脊梁高地が貫き、道路は曲がりくねり登り下りを繰り返す。だからこれがバスに乗って感じる正直な印象なのだ。オーバーかも知れないが、最後のジェットコースターのような急激な下り坂は、まるで中城湾に墜落するような気分になったものだ。<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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