テーマ:☆詩を書きましょう☆(8513)
カテゴリ:詩
四季・祈り ポインセチアが鮮血を浴びて立ちつくしている うつむき加減に匂っている緋寒桜は まるで穏やかなウチナンチュ サトウキビの白い穂は 風にそよぎながら糖度を高め 刈り取りの時を待っている アスファルトの道路を駆けぬけるランナーの額にも うっすらと汗が光っている 冬 東シナ海の重たい雲間から降り注ぐ光も ほんとうに明るくなってきた 雨が銀色に島を包むと 大地は待ち兼ねていたかのように 生気を取り戻す とある日 一族は墓前に集い 先祖の加護と 安らかな暮らしとを祈る 春 木陰はあんなにも涼しいのに 日向は まるで刺されたような痛み 強い陽差しの中で 御嶽(うたき)も静まりかえっている ここでは 少しでも昼寝をしておかないと 体が言うことを聞いてくれない 眩しい星砂の浜辺 珊瑚礁のすぐ向こう側には 青い裂け目が戦慄している 夏 一晩中 悲鳴を上げていた樹々よ 暗闇の彼方へ拉致された無数の木の葉よ 嵐の翌朝には 真っ二つに折れた南洋杉や 窓ガラスにへばりつく潮風の残骸に 驚かされるのだ 台風は 海から立ち上がる水蒸気を巨大なエネルギーに変えて 痩せこけた島々を 繰り返し 繰り返し 襲ってくる やがて 新北風(みいにし)に身震いする日が来ると 秋 美しい島よ 何も無いからこそ 一層豊かな 孤島苦(しまちゃび)の島たちよ この小さな島嶼にも これまで数え切れない時間が巡り 季節は音も立てずに移り変わる いまは 秋 天に 短くて貧しい祈りを捧げる季節 1990.10.22 第一詩集『南島風景』から 沖縄の染色:紅型(びんがた) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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