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マックス爺のエッセイ風日記

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2014.03.09
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カテゴリ:
版画1.jpg


     久高島・1990・夏



 紺碧のうねりの向こうに
 横たわる小島


 後生(ぐそー)は崖(ばんだ)の中空に穿たれた風葬の地
 夏草は蔽い尽くし(岩々を)
 太陽は燃え上がる(さらに白く)
 打ちつける潮の飛沫に守られて
 無数の骨神は重なりあいながら
 幾千年 幾百年もの間
 永い眠りについていた


 この島は神の島
 昔
 アマミキヨとシネリキヨが
 波涛の彼方から流れ着き
 ウチナンチュの祖先になったという


 それ以来 この島では
 男達は海人(うみんちゅ)となって大海原に漕ぎ出し
 遠くシャムにまで
 琉球王の名を轟かせたという


 また 女達は祝女(のろ)となり
 航海の無事と王国の繁栄とを祈りながら
 この島を守って来たという


 この島は呪いの島
 小石や草木や貝殻さえ
 持ち出すと 今でも祟(たた)りがあるという
 

 あたかも
 神の使い
 であるかのように
 わたしの後をついてくる
 白い子猫


 女達を
 小石を 草木を
 そして貝殻を
 呪縛で封じ込めていたのは
 あまりにも貧し過ぎたから
 なのだろうか


 祝女(のろ)達は既に年老いて路端に蹲(うづくま)り
 十二年ぶりの神行事イザイホーも
 今年は危ういという


 白昼夢のような 伝説の島


 今も
 わたしの三半規管に
 海鳴りが眩めいている


                      1990.7.17 第一詩集『南島風景』より



                       家9シャコ貝.jpg  


 久高島は沖縄本島知念半島の沖合3.5kmの太平洋上に浮かぶ小島。ここに沖縄人の祖先であるアマミキヨとシネリキヨの夫婦神が漂着し、知念半島へ渡ったとする伝説が残されている。琉球王朝時代、この島の男達は中国大陸や東南アジアとの貿易船に乗り込み、留守を預かる女達は不貞を働かないよう神行事に勤しんでいた。一木一草、貝殻の果てまで島から持ち出しを禁じる掟は、資源の乏しい島の暮らしを守るためであった。

 1990年の夏、私は職場の仲間とこの島に渡り、一夜をキャンプで過ごした。白い子猫の話は本当で、あたかも私達を港に案内するように付きまとった。下のシャコガイはこの時久高の海中で獲ったもの。この島の畑は共有のもので、古来順番に耕す場所を交代して来たそうだ。原始共産制が残る珍しい島。祝女(のろ)の高齢化に伴い、この島のたくさんの神行事は、現在は行われていないと思う。

マル秘 ふぼう御嶽は男子禁制の聖地。また風葬墓を島外の人間が見ることは出来ない。パリ大学で民族学を学んだ画家の岡本太郎は、1人の島民に無理に頼んで風葬墓の写真を撮った。それが出版され世に知られて、彼に風葬墓を案内した島民は追及され、狂死したと言われている。沖縄在勤当時私も何度か風葬墓を訪ね、白骨を目にした。また沖縄には、原始神道の姿が未だに色濃く残されている。どくろショック<続く>





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Last updated  2014.03.09 04:46:55
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