テーマ:☆詩を書きましょう☆(8513)
カテゴリ:詩
透明な手紙 ときに人は手紙を書き 手紙を受け取る 手紙はそれを書いた人と 受け取った人にしか 本当の意味はわからない 人はなぜ手紙を書くのだろう 愛し 別れ 励まし 裏切る あたりに散らばる無数のことばの中から 自分だけのことばを捜して 宛先のない手紙 ついに出すことのなかった手紙の数々 もし遠く過ぎ去った若き日の自分に 1回だけ手紙を書くことができるなら 人はいったいどんなことを書くだろうか あるいは まだ見ぬ未来の自分に 手紙を書くことが許されるなら 人は何を尋ねようとするだろうか きっとその手紙は 透き通った空の色を 映しているように思えるのだが 1992.1.26 第二詩集『透明な手紙』から 沖縄勤務の3年目。ガジュマルが茂る宿舎に残ったのは、高校3年の長男と私だけになった。長女は四国の大学に進学し、次男の進路を心配した妻と中学2年の次男も長女が住む街へ引っ越した。成長期にある長男と2人暮らしになった私は、毎日メニューを書き、食事を作った。あの時は苦しかった。自分の仕事をしながら、子供の面倒を見る辛さ。長男がズボンを破いても私は繕うことが出来なかった。一方勉強が不得意な長男は、この後大学受験に失敗する。 その苦しみの中で生まれたこの詩には、沖縄のことは何も出て来ない。私は小学生の頃から詩を書いていたが、二十歳の頃を最後に、全く詩が書けなくなった。それが沖縄に転勤して25年ぶりに詩が書けたのだ。この詩の特徴は、現実感が乏しいことだろう。それも魅力と考えた私は、第二詩集のタイトルをこの詩から採った。今回から第二詩集『透明な手紙』の中から、主な作品を紹介したい。<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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