テーマ:☆詩を書きましょう☆(8513)
カテゴリ:詩
海 海を見に行く 光は波をルリ色に変え 波は小舟を静かに揺すり 小舟は悲しく岸壁に繋がれる 海に注ぐ川 白い砂浜 波とたわむれる子供達 捨てられた麦わら帽子 遠くを眺める老夫の眼差し 潮風と煙の匂い 眩しく煌めくそれらのものが 記憶を呼び起こすひととき あれはいつか見た風景 あれもいつか嗅いだ匂い 幼い日に繋いだ母の手の微かな感触 もう取り戻すことのできないわたしの時間 九月半ばというのに まだ暑い浜辺では 押し寄せる波が 無心に珊瑚の残骸を洗っている 1991.9.12 第二詩集『透明な手紙』から 沖縄の思い出のサンゴ(左)と貝殻 沖縄での私の移動手段は排気量50ccの原付。この身軽な乗り物に乗って、私は島中を駆け巡った。訪れた先は、城(ぐすく)、御嶽(うたき)、拝所(うがんじゅ)、神社、風葬墓、観光地などなど。時には「海中道路」の突端にある伊計島や、フェリーに乗って浜比嘉島や伊是名島まで遠征したこともある。この詩に出て来る海岸は、沖縄本島中部にある嘉手納町の水釜海岸だったと思う。この時もどこかへ向かう途中で、ふらりと立ち寄ったのだ。 沖縄勤務の3年目、妻、長女、次男が内地へ帰り、私は長男と2人暮らしだった。その淋しさを埋めるように、私は原付に乗って小さな冒険の旅を続けていたのだ。誰も居らず、小舟が何艘かあるだけの浜辺。その何気ない風景から、この詩は生まれた。沖縄ならどこででも見られる海岸だが、私にはなぜかとても懐かしい風景のように感じられたのだ。<続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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