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マックス爺のエッセイ風日記

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2014.03.27
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カテゴリ:
梢横.jpg


    
  H氏の御霊に


 窓をたたくのは誰ですか
 風も出てきました
 外は寒いですか
 センダードの空の上
 あなたの星がひときわ光り
 そして静かに消えました


 つい今し方
 あなたの訃報を聞いたばかりです
 いつもは陽気な富雄君の声が
 電話の向こうでくぐもっていました


 そうでしたか
 やっぱりそうだったのですか
 あなたが喉の手術をしたと聴いたときから
 わたしはこの日がくることを
 秘かに怖れていました


 父の死も見ました
 姉の死も見ました
 祖父や祖母や伯父や伯母や
 義母の死にも遭いました
 そしていま
 血がつながっているわけではない
 あなたの死と向かいあっています


 夕方 ひとしきり言い争った長男は
 布団をかぶって寝てしまいました
 つい先程まで風の音を怖がっていた妻も
 傍らで静かな寝息を立てています


 これからどこへ行きますか
 西方浄土は遠いですか
 風が窓をたたきます
 そこで泣いているのは誰ですか


             1992.5.8 未刊詩集『日常』から


                      ストック.jpg


 H氏の訃報を聞いたのは沖縄から転勤した年の春、四国の松山でだった。電話で知らせてくれた富雄君は会計課の職員で、野球部の後輩だった。いつもは明るい彼の声が、とても沈んでいた。私はH氏の奥様に弔電を打ち、お悔やみを富雄君に立て替えてもらった。

 H氏の自宅を訪ね、霊前に線香を手向けたのは、私が長い転勤暮らしを終えて故郷の仙台に帰ってから。この詩もワープロから打ち出して、氏の霊前に捧げた。氏が亡くなってから11年後のことだった。奥様はご健在だったが、脚が悪いため坂を登るのが辛いと話されていた。

 詩の中の「センダード」は、宮沢賢治の小説『銀河鉄道の夜』に出て来る地名で仙台のこと。因みに盛岡は「モリオール」だったと思う。多感な青年時代にH氏と出会えたことは、一生の宝だと思っている。この詩は沖縄で書いたものではないが、氏を偲び掲載させていただいた。合掌





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Last updated  2014.03.27 09:25:18
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