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マックス爺のエッセイ風日記

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2014.06.04
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カテゴリ:芸術論
神様1.jpg

 映画『神様のカルテ2』を観たのは3月末。長野県の地方病院で、地域医療に取り組む医者達がテーマだった。原作者は医者の経歴を持つ新進気鋭の作家。所々に感動の種が散りばめられてはいたが、私の心が揺す振られることはなかった。確かに医者の日常は描けているかも知れないが、病に苦しむ人間の姿や、地域医療の問題点を描けていない。私にはそう思えたのだ。


        ナスの花  ナスの花.jpg

 その頃読んでいた小説は、柳美里の『命』四部作。16歳から10年以上同棲した相手である劇団主宰者の東由多加が末期がんに冒されたと知り、共に暮らす道を選択する彼女。出版社から莫大な金額を前借りし、時には最新の治療を受けるために渡米し、さらにより高度の治療を求めて転院を繰り返す彼ら。彼女の体内には新しい生命が宿り、やがて彼女は出産する。相手は妻のいる男だが、彼女が身籠ったと知って去って行く。

 乳飲み子を抱えながらの壮絶な看護の日々。だが、刻々と最後の日が近づく。排便にも苦しむ東。小説家である柳は、その姿を丹念に描く。東の希望の光は幼子の命。自分とは血のつながってない子供の成長だけを楽しみに、何とか生きようとする姿は鬼気迫るものがある。

 生と死のせめぎ合い。だが食べられない東は、とうとう最後の日を迎える。壮絶な戦いの日々を描くこの四部作は、元医者の小説を基にした薄っぺらな映画を、完全に凌駕していた。


アナ1.jpg

 4月末に観た『アナと雪の女王』はアンデルセンの童話を下敷きにして作られたミュージカルアニメ。これがなかなかの出来だった。子供だけでなく大人も楽しめる内容で、恋と王女姉妹の愛が交錯する。人間不信に陥った姉の女王を救うべく、妹は厳しい氷の世界を訪ねて行く。

 これまでの国内の興業記録を塗り替えたこの作品は、女優松たか子が姉のエルザを、そして神田沙也加が妹のアナの声優を務め、2人の美しい歌声が評判になった。愛は氷をも溶かしたのだ。


      トマトの花   トマトの花.jpg

 この頃に読んでいた小説は、柳美里の『石を泳ぐ魚』。韓国人女性と在日韓国人2世である女性(柳)との不思議な関係の話だった。この原作はプライバシーを侵害されたとして裁判になり、柳は敗訴した。だからこの小説は、書き直したもので、相手の印象はかなりぼやけたものになっている。

 破壊された家庭と在日韓国人の心情、民族は同じでも育った国によって異なる精神構造。作者の研ぎ澄まされた神経が、読み手に伝わる小説だった。


テルマエ1.jpg

 5月に観たのが『テルマエロマエII』。古代ローマの温泉技師が、古代ローマと現代の日本を行き来する空想の世界で、原作は同名の人気漫画。今回はブルガリアにわざわざ作った古代ローマのコロシアムのセットや、元横綱曙や元大関の琴欧州の出演が話題を呼んだが、あまり前作と変わり映えしない印象を私は受けた。


    ジャガイモの花  ジャガイモ.jpg  

 この頃読んでいた小説は、柳美里の『家族の標本』。様々な家庭のエピソードが、パンドラの箱から次々に飛び出す。不幸を絵に描いたような話が、これでもかこれでもかと続くのだが、そんな話がきっと彼女の小説の「肥やし」になっているのだろう。この世に理想的な家庭など在りはしない。まして社会体制と人間関係が複雑な現代においては。


wood1.jpg

 比較的最近になって観たのが『WOOD JOB ~神去なあなあ日常~』。大学受験に失敗した都会の青年が、三重の山村で林業にチャレンジする話だ。原作は三浦しをんの小説。現代青年の頼りない心情、高齢化と過疎化が進む山村生活、重労働で安い外国産の木材に押される林業の実態、そして都会と山村の暮らしぶりの違いが、映画を通じて鋭利に描かれて行く。


            wood2.jpg

 厳しい山村での暮らしに、あれほど弱々しかった青年が次第に鍛えられて行く。自由な精神が封建的な山村では通じないのだが、なぜか青年にはその不自由さが好ましく感じられ、一度は脱走した山の暮らしに再び戻って行く。

 山に入る儀式は神聖だ。山の樹木や獣は、山神の許可なしには採れないのだ。巨木を切り倒し、そしてそれを里まで運び出す。その姿そのものが太古から伝わる宗教儀式なのだろう。下らないテレビ番組よりは、この映画を観た方がよっぽど勉強になる。私はそう感じた。





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Last updated  2014.06.04 10:09:35
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