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マックス爺のエッセイ風日記

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2014.06.30
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カテゴリ:芸術論
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 『春を背負って』は、突然の父親の死によって、山小屋の経営を引き継ぐ青年の話である。監督は木村大作。彼が初めてメガホンを持った作品が『剱岳・点の記』。これは新田次郎原作の小説を映画化したもので、最新の地図を作るため高山に登って測量する明治の男達の話だった。高い評価を受けたあの映画が、彼の唯一の作品だった。たった1作で、もう映画は良いと思っていたそうだ。

   
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 ところが何気なく書店で読んだ本が、彼の心を捕えてしまった。原作は奥秩父が舞台だったようだが、360度どこを見回しても絵になる立山を、彼はまたしてもロケ地に選んだ。標高3015mの立山連峰大汝山だ。その山頂にある「菫小屋」を、東京でトレーダーをやっていた青年(松山ケンイチ)が引き継ぐことになる。この山小屋を手伝う娘(蒼井優)と謎の山男(豊川悦司)の組み合わせがまた絶妙。


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 私は「立山登山マラニック」に3度出場し、2度雄山(3003m)の頂上に立ったことがある。このレースは海抜0mの富山湾を早朝に発ち、標高2500mの室堂を経由し、雄山山頂がゴールの過酷なマラニックである。距離は65kmしかないが、高低差は3003m。周囲の風景は抜群だ。あの立山の懐かしい景色。雄大な立山連峰をスクリーンで観ながら、唯一参加した山岳レースを思い出していた私だった。


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 『ノア 約束の舟』は、旧約聖書の創世記に記された「ノアの方舟」の話である。乱れ切った人間の世界に怒った神は、ノアの家族を除いて全ての人類を滅ぼすことを決断する。大洪水を起こして飲み込んでしまうのだ。30年以上も前のこと、アメリカの軍事衛星がトルコのアララット山(5165m)中腹に巨大な船があるのを発見したことがあった。これは「ノアの方舟」に間違ない。考古学者は色めき立ち、世界もこのニュースに注目した。


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 だが、結果的にそうではなかったようだ。方舟は旧約聖書にその大きさや形が厳密に記されているが、発見されたのは、現代風な船の形をしていたのだ。それにしても何故そんな船の残骸が、高山に残っていたのだろう。実はこの「ノアの方舟」の話には元になった伝説がある。古代シュメール帝国の粘土板に記された洪水神話や、ギルガメシュ叙事詩に記された神話。共にチグリス・ユーフラテス川流域で起きた大洪水と神の怒りの話だ。


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 旧約聖書によればノアの年齢は500歳から600歳。3人の息子にそれぞれ妻がいることになっているが、映画では違う。それでも神の意志を尊重すべきか家族を信じるかで、ノアの苦悩は深まるばかり。人間の業そのものが映画のテーマだ。巨大な方舟、選ばれた動物の大群、世界の最後を思わせる嵐と大雨など、見どころはたくさんある。長い漂流の後に方舟は岸に漂着し、たった1人で荒野に向かう息子の姿。あれが私達の祖先なのだろうか。


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 『ポンペイ』は古代ローマ帝国時代の別荘地だが、西暦79年ベスビオ火山の爆発によって町全体が火砕流に飲み込まれる。歴史的な事実にフィクションを取り混ぜて、この映画は作られている。ユネスコ世界文化遺産の代表とも言えるポンペイ遺跡の発掘物は、私もこれまでに2度この目で確かめているが、実に見事な芸術作品ばかり。町全体が一気に火山灰に覆われたのだから丸ごと残るのは当然だが、逃げ惑うポンペイ人の悲鳴が聞こえて来そうだった。


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 映画では、戦争で捕えられたケルト人奴隷の剣闘士が、ポンペイ人の娘に命を助けられたことをきっかけに恋心が芽生える。壮大なコロセウムで繰り広げられる凄惨な殺戮。貴族の娯楽を目的にした奴隷達同士の無意味な戦い。人口2万のポンペイ市民は、その野蛮な様子を観て酔いしれる。そこに火山の爆発だ。コロセウムも瀟洒な別荘地も港も、飛んで来る火山弾や地震の振動で破壊されて行く。


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 どうしたらあんな映像が撮れるのだろう。きっとCGを駆使しているのだろうが、観ている私達は自分まで火山の火砕流に巻き込まれて行くような錯覚に陥る。なるほど歴史は過酷だ。あれほど享楽に耽っていた街が、たった1日で地上から消え去るのだから。立ちつくす若い男女の背後から、ベスビオ火山の火砕流が迫る。ポンペイの遺物には、抱き合って接吻する男女の遺骸がある。まるで彫刻みたいに美しいが、それは本物の遺骸なのだ。





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Last updated  2014.06.30 09:05:15
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