2938274 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

マックス爺のエッセイ風日記

マックス爺のエッセイ風日記

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2015.01.16
XML
カテゴリ:生活雑記
<雪の朝>


                   夜の窓2.jpg

 私がまだ子供だった頃、今から60年も前の話だが、静かな冬の夜は汽車の音が遥か離れた駅の方から聞こえたものだ。それはそれは物悲しい夜汽車の音だった。


夜明け前3.jpg

 高校1年の時、父が夜逃げ先の松山で死に、故郷の仙台に帰り一時叔父の家に厄介になっていたことがあった。高校2年からは放課後にアルバイトをした。帰宅は9時ごろ。雪の夜はとても静かだった。誰もいない畑の中の小道を、星を見ながら帰った。朝、目覚めると頭に雪が載っていることがあった。天井板がないため、屋根の隙間から入ったのだ。


          夜明け前2.jpg

 元旦には年賀電報の配達をしたこともある。雪の坂道を自転車を押しながら、電報を配ったものだ。それをさほど辛いとも思わなかった。貧乏は若い頃から私の友達でもあった。


夜明け前1.jpg

 20代前半の勤労学生の頃は、バス通りに面した家に下宿していた。冬の朝はシャリシャリと言う音で目覚めた。「あっ、今朝は雪だ」。聞こえたのはチェーンの音。その頃は滑り止め用に、タイヤにチェーンを巻くのが一般的だった。


             橋4.jpg

 そんな訳で、北国にいながら私はスキーが下手だ。貧乏であまりスキー場へ行く機会がなかったのだ。私に比べたら妻の方がずっとスキーが上手。独身時代にたった1度だけ、彼女とスキーに行ったことがあった。それも遠い日の思い出になった。


木14坂道.jpg

 昨年の暮れ、仙台では何度か雪が降った。雪国の方々には申し訳ないが、つい嬉しくなって雪景色を撮りに、近所の公園に出かけた私だった。一昨年の冬、仙台では73年ぶりの大雪になった。それでも降ったのは35cm。小学校の時にもっと降ったような記憶があるが、きっと背が小さいため大雪と感じただけだったのだろう。今は坂道でも、ソリで遊ぶ子供はいないが、私達が子供の頃は自分でソリを作ったものだ。


               家1.jpg

               これがまあ終の栖(ついのすみか)か雪五尺


 小林一茶の句である。彼は薄倖の人であった。嫁をもらったのは晩年になってから。その若い嫁も、確か何かが原因で亡くなったはず。彼が住んでいたのは信濃の国(長野県)の片田舎。冬ともなれば雪は五尺(150cm)も積るような村だった。


14.jpg

 だが、一茶には次のような優しい句もある。

      うまさうな雪がふうはりふうはりと
      雪とけて村いっぱいの子どもかな

 ふうわりふうわりした美味そうな雪。そしてその雪が解けると、家の中から大勢の子供達が外へと飛び出して遊び出す。寒村でのそんな様子が目に浮かんで来る。


             家2.jpg

               幾たびも雪の深さを尋ねけり

 これは病床にあった正岡子規の句。彼は若くして結核と脊椎カリエスに冒され、床に伏していた。まだ20代後半の時だ。恐らくこの句を作ったのは29歳ごろ。場所は東京のようだ。


家6.jpg

      障子あけよ上野の雪を一目見ん

 同じ頃の句であろう。場所も上の句と同じ家だと思う。障子を開けて雪を見たいと頼んだ相手は、松山から上京して子規の面倒を見ていた妹だと思う。司馬遼太郎の小説を基にしたテレビドラマ「坂の上の雲」の場面を思い出す。妹役を演じたのは菅野美穂だった。


    家4.jpg

    太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ
    次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ


家3.jpg

 三好達治の詩「雪」である。冬の夜、しんしんと雪が降る。太郎の家の屋根も次郎の家の屋根も真っ白な雪。その屋根の下で、こんこんと眠る子供の顔が思い浮かぶ。まるで童話のような詩だ。


     家5.jpg

 私はまだ現役の頃、山形と石川で勤務したことがあった。どちらも日本海側の豪雪地帯で、雪の多さには驚いたものだ。その頃山形では一冬に何人ものお年寄りが亡くなった。屋根の雪下ろし作業で転落しての事故だ。石川では一晩に1mも降った。翌朝はスコップを持ち、それで雪を掘りながら職場へ行った。昔はもっと雪が多く、2階から出入りしていたと土地の老人が話していた。豪雪は今も雪国の人々を苦しめている。


11.jpg

 雪景色を楽しむ太平洋側の人々を、彼らはきっと笑っているだろう。いや、それとも案外羨んでいるかも知れない。


          庭2.jpg

 我が家の庭の雪も今はすっかり融けている。そして先日まで連日乾燥注意報が出ていた。昨夜のうちに雨が降ったようだ。今狭い畑では、15個ほどの白菜が寒そうに震えている。そして土の中に埋められた大根は、残り7本ほどに減った。<続く>





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2015.01.16 07:04:49
コメント(14) | コメントを書く
[生活雑記] カテゴリの最新記事


PR


© Rakuten Group, Inc.
X