マックス爺のエッセイ風日記

　

　そうだ岩出山に行こう。そう思ったのはテレビのニュースを見た時。岩出山で「互市」（たがいち）をやってると言う。互市は農閑期に農家などが手作りの産品を持ち寄って、互いに不足したものを補いあった伝統行事のはず。ブログネタとしても魅力がある。これから始まる長い冬に備えて、話題性のあるテーマを少しでも取材しておきたい。


　　　　　　　　　　　　　　　

　岩出山は仙台藩祖伊達政宗公が１０年間滞在した町。岩出山伊達家の学問所である「有備館」もあるし、城山もあるようだ。それにずっと前から行きたいと思っていた「名生館官が（みょうだてかんが）遺跡」も近辺にある。そこで地図でそれぞれの場所を確認し、ネットで列車の乗り継ぎを調べた。


　

　日課であるブログは何とか書き上げたが、ブログ友を訪れてコメントする暇はない。いつもよりかなり早めに朝食を摂り、自転車で最寄駅へ向かった。料金表を見ると岩出山の一つ先の「有備館」まで１３００円ほど。仙台駅で東北本線の小牛田行きに乗り換える。これで「こごた」と読む。そして小牛田からは陸羽東線に乗り換え、有備館まで行くのだ。


　　　　　　　　　　　　　　

　これが陸羽東線を走る列車。電車ではなくディーゼルカー。３回ほどホームに入った車両が、いずれも車庫へ回送されて行く。これはひょっとして燃料の補給のためだろうか。私の疑問をよそに車両は鋭い汽笛を鳴らし、黒い煙を吐いて車庫へ向かった。

　この駅ではかつて名物の「山の神饅頭」を停車中に売りに来たものだ。ひょっとして今でもあるのかと思ってホームへ行ったが、売り子の姿はどこにもない。東北新幹線が通らない淋しい乗り継ぎの駅になってしまったようだ。９時過ぎ電車が停まった。どうやらこれが折り返すみたいだ。９時６分、「湯煙りライン」の普通列車が動き出す。鳴子温泉など東北の名だたる温泉を通る列車だ。


　

　３２分後、列車は有備館駅に着いた。構内に伊達政宗公の白い騎馬像がある。仙台の青葉城にある堂々とした像とは違って、見慣れない華奢な感じのもの。駅のまん前が有備館。目の前に静かな庭園が見えた。へえ～っ、長年私が来たいと思っていたのは、こんな場所だったのか。きれいに敷き詰められた砂を踏むのさえ遠慮される美しさ。


　　　　パンフレットから　

　窓口の案内嬢がパンフレットをくれた。東日本大震災によって倒壊した建物の復元工事は終わったが、目下資料などを再配置してるため、外からしか見ることが出来ない由。ただし庭の見学は無料とのこと。ついでに城山への登り方と、互市が開かれている岩出山駅前への行き方を尋ねた。彼女は地図が載った別なパンフレットを出し、丁寧に経路を教えてくれた。これできっと時間の無駄なく行動出来るはずだ。


　　修復中の様子

　天正１９年（１５９１年）政宗は秀吉の「奥州仕置」により、山形の米沢からこの地に移された。当時は岩手沢と呼ばれた寒村だ。家康は息子の義理の父である政宗のために家臣を遣わし、新しい城の縄張り（設計）をさせた由。その城山の麓にあるのが有備館だ。


　　　　　　　　お上の間　

　政宗は仙台に移った後、四男の宗泰を岩出山１万５千石の領主とした。慶長６年（１６０１年）のことだ。有備館は岩出山伊達氏第２代宗敏の隠居所として延宝５年（１６７７年）に建てられたが、後に文武の隆盛を図るため子弟の学問所となった。現在は国指定の史跡、かつ国指定の名勝となっている。


　

　庭園は正徳５年（１７１５年）、仙台藩の茶道頭である清水道竿によって作庭された。いわゆる石州流である。岩出山城の断崖を借景とし、池に４つの島をあしらった廻遊式池泉庭園で、四季の花が絶えないよう配慮されていると言う。昭和４５年（１９７０年）伊達家より旧岩出山町に寄贈され、現在は合併した大崎市が管理している。今回はパンフレットから借用した写真が多かったが、そのうちに見事な庭園と建物の写真を特集したい。＜続く＞